2019 AUTOBACS SUPER GT
ROUND 4 Chang SUPER GT RACE
開催地:BURIRAM UNITED INTERNATIONAL CIRCUIT(タイ・ブリーラム)/4.554km
6月29日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:10,618人
6月30日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:20,282人
見えてきた光明。後半戦の巻き返しが期待できる展開で終えたレース
全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第4戦、「Chang SUPER GT RACE」がタイのチャーン・インターナショナルサーキットで開催された。今年もaprは引き続き2台体制で挑むが、マシンをTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)にスイッチ。駆動方式をミッドシップからFRに改め、さらにハイブリッドシステムはそのままに、5.4ℓのV8エンジン、2UR-Gを新たに搭載する、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」を嵯峨宏紀選手と中山友貴選手を託している。タイヤは引き続きブリヂストンを使用する。
前回の鈴鹿では予選13番手からスタートし、ポジションキープでレースを進める中、途中のピットストップで給油に時間がかかってしまったこともあって、いったんは順位を大きく落としてしまったものの、最終的に11位という結果を得ることとなった。これで開幕から3戦連続で予選よりも順位を上げることができ、決勝に強いクルマということを引き続きアピールすることができた。
今回、海を渡ってやってきたタイ、チャーン・インターナショナルサーキットでのレースは、今年が6回目の開催となる。ほぼフラットで、コース前半に続く3本のストレートを見れば分かるとおり、エンジンパフォーマンスに優れる車両に有利とされるのが最大の特徴だ。JAF-GTにはどうしても厳しい展開を強いる状況の中で、ドライバーやチームが強力なライバルたちと、どう渡り合うか。まさに腕の見せどころと言えた。
公式練習 6月29日(土)10:00〜13:35
今まで「とにかく暑い」という印象しかなかったタイのレースだが、こと今年の土曜日に関しては印象が違っていた。薄い雲がサーキットの上空を絶えず覆っていたこと、そして時にさわやかな風が吹いていたせいか、比較的過ごしやすかったからだ。それでも公式練習の開始時は、気温が30度で、路面温度は35度と、感じるよりは高くなっていた。
もちろん、このコースでの事前テストは行われておらず、全チームがぶっつけ本番となるのだが こと「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」にとっては、過去5回のレースで得られたデータを、新車になってFRに改め、新しいエンジンを積んだことで活かしにくいのでは……という不安は少なからずあった。
実際ここまでの3戦も「産みの苦しみ」を味わっていたが、正直に言えば今回は灼熱環境もあいまって、より「ゼロスタート」となっていた。
今回も嵯峨選手からの走行開始となり、周回を重ね、セット変更を行うたびタイムは縮まっていくが、その幅がいつに増して小さい。1時間を経過して、ようやく1分34秒217にまで到達したところで、中山選手と交代する。そのままセッション終了までロングランを担当した中山選手は、コンスタントにタイムを刻んではいたが、1分35秒020を記録するのがやっと。それでもトラブルに見舞われることなく、多くの周回を重ねられたことで、貴重なデータを積み重ねることができた。
公式予選Q1 6月29日(土)15:00〜15:15
今回もQ1担当は嵯峨選手。公式練習では十分ではないにせよ、徐々にマシンが仕上がってきたこともあって、さらなるポテンシャルの向上を狙い、大幅なセット変更を行うこととなった。だが、結論から言えば、これが裏目に出てしまう。決勝での温度上昇を見越したタイヤ選択も、気温33度、路面温度40度という状況では、本来の性能を発揮したとは言いがたく……。
入念にウォームアップを行ってから、アタックを開始した嵯峨選手ではあったが、1分34秒台を切ることができず。アタック3周目にようやく1分34秒465をマークし、もう1周攻め込んでいったものの、タイムアップならず。今季ワーストの23番手という結果に甘んじた。
嵯峨 宏紀選手
走り初めからいい状況で走り出せていなくて、特にブレーキが厳しかったですが、いろいろやってみたことが、予選では全部裏目に出てしまいました。公式練習でうまく仕上げられなかったのが、痛かったですね。タイヤもかなり硬いのを選んでいたというのもあって、アタック自体はほぼノーミスでいけたのですが、単純にあのタイムしか出なかったという感じですね。
こういう時もあると思うし……。
中山 友貴選手
走り出しから、いいスピードがなかったので、厳しい状況になっていまいました。
チームとしっかり話し合って、今日の結果を踏まえ明日までに修正して、新しいトライをしていきます。目先のリザルトもそうですけど、シリーズ後半戦で力強い戦いができるようになるための、データ取りも踏まえてしっかり走っていきたいと思っています。
金曽 裕人監督
このクルマにとって今年は、どのサーキットも初めてですし、特に今回は事前のテストもなかったことで、この短時間ではサーキットに合わせたセットアップを出せませんでした。それでも、それなりに走れることが分かったことで、予選に向けて入れたセットアップが全部裏目に出てしまって……。
初めてのサーキットに対して合わせ込む力が、このクルマに関しては引き出しが、僕もドライバーも足りていませんでした。逆に言えば、こっちの方向はダメ、これ以上やっちゃダメだというのが分かったのは、決勝に向けての大きな収穫です。今夜は寝ずに考えます。
決勝レース(66周) 6月30日(日)15:00〜
普段は土曜日の公式練習後に行われるサーキットサファリが、今回は20分間のウォームアップの前に行われ、日曜日は計40分間の走行が可能とされた。予選で試されたセットを公式練習の状態に戻すのは予めの予定だったこともあり、貴重な時間の追加ともなっていた。
まずサーキットサファリを走り始めたのは嵯峨選手。バスとともに走る時間を確認に充てて、バスが離れたタイミングからぐっとアクセルを踏み込むことに。まずは1分36秒004をマークする。ラストの1周のみ中山選手が走行し、10分後にスタートしたウォームアップをそのまま走ることに。予想どおりタイムは徐々に縮まっていき、1分35秒257にまで到達したところで、再び嵯峨選手がドライブ。2周のみの計測だったが、1分35秒160を記録して「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は15番手につけることとなった。
さて、気になるスタート直前の温度だが、気温は33度、路面温度は46度にまで上昇。雲の切れ間からは青空も見えるようになり、おあつらえ向きのコンディションとなってきた。
今回もスタート担当は中山選手。心配されたオープニングラップの混乱もなく、まずはポジションキープからのレース開始となる。しばらくの間はアクシデントに見舞われた車両が現れた時のみ 順位を上げる格好となっていたが、それは、あらかじめタイヤ無交換策を予定したためだ。
中山選手はタイヤをしっかりマネージメントし、コンスタントに周回を重ね、それで20周目には1台をパス。その頃、すでに周回は1/3を超えていただけに、早めにドライバー交代を行う車両も出てきたこと、そして25周目に中山選手はもう1台をかわしていたことで、12番手まで浮上した27周目に予定どおり嵯峨選手にバトンタッチ。タイヤはもちろん無交換。あとは、この後ピットに入る車両が、後ろに連なるのを待つだけとなっていた。
だが、大きな誤算が生じてしまう。GT500にアクシデントが発生、1台がコース上でストップしてしまったため、セーフティーカーが導入されたのだ。その時、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は、まだピットに入っていない暫定トップ車両の後ろにいたことで、実質ラップダウンとなってしまったのだ。これで勝負権は完全に失われた……。
どうあがいても埋められぬ差が築かれてしまった状況でも、諦めずに嵯峨選手は周回を重ねていき、また1周差のついた車両と同じようなポジションを走って、遜色のないタイムで走り続けられたことは、今後のレースに向けた大きな期待材料と言えるだろう。1周遅れのポジション変動のない15番手でチェッカーの予定だったが、残り2周の、3コーナーで入賞争いのGT300にリアをヒットされスピンし、最終的に18位でレースを終えた。
次回のレースは富士が舞台で、しかも500マイル(約800km)の長丁場。「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」の大暴れに、大いに期待していただきたい。
嵯峨 宏紀選手
予選で下位に沈んでしまったので、少しでも上の方に行けるように頑張ったんですけど、セーフティカーのタイミングがあまりにも悪くって、まだピットの終わっていない暫定トップのクルマを捕まえてしまったことで、その時点で我々の順位は確定してしまいました。本当に運がなかったとしか言いようがないですね。でも、シーズンはまだ終わったわけではないので、諦めずにコツコツやっていきます。いずれにせよ、根本的に改善しなきゃいけない事があり、後半戦には投入されると聞いてますのでそれまでは厳しいかな、と思っています。
中山 友貴選手
今回もスタートを担当させてもらったんですが、決勝で安定した速いクルマになるようにチームが考えてくれて、バランスとしては今週末でいちばんいい状態で走ることができました。何台かオーバーテイクできて、単独で前が空いている、クリーンエアの状況ではペースが安定している感触もあったので、そのまま予定どおりの周回をこなして、嵯峨選手にバトンを渡せました。その後、セーフティーカーが入らなかったら、ポイントを獲って帰れるぐらい追い上げるスピードはあったと思うので、すごく悔しいです。ただ、シーズンを通して考えると、常に大きなトライをして、クルマのバランスは少しずつ良くなる方向に進んではいます。次のレースはまた長いレースになるので、やっぱり速いペースでレースを周回していかないと勝ち目はないので、そういうクルマになるように自分も貢献していけるよう、引き続き頑張りたいと思います。
金曽 裕人監督
予選で振ったセットは大失敗でした。ふたつある分岐点の中、予選セットが失敗だったことで、元に戻す方向がパフォーマンスに繋がることが分かりました。選んだタイヤもハードでしたから無交換を行って、あのペースでずっと走れたのは大収穫です。クルマのセットの方向性としては完璧には程遠く、まだまだ詰めていかなければならない部分がたくさんあるのですが、ようやく光が見えてきました。シャシは各所に課題が残されていますが、毎レース完璧なのがタイヤ。無交換で、このパフォーマンスが継続できるブリヂストンタイヤには、すごく助けられています。
今回セーフティーカーによる運の部分で入賞できなかった事は、非常に残念です。新規製作の新型車両となり、全てが初であり産みの苦しみばかりですが、一歩一歩前進しておりますので、後半戦にご期待ください。