No.30 TOYOTA PRIUS apr GT
2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 7
CHANG INTERNATIONAL CIRCUIT
開催地:チャーンインターナショナルサーキット(タイ・ブリーラム県)/4.554km
10月7日(予選)天候:曇りのち雨 コースコンディション:ウェット
観客数:15,881人
10月8日(決勝)天候:雨のち晴れ コースコンディション:ウェット〜ドライ
観客数:26,376人
永井選手にとって2度目の海外レース、しっかりポイントを獲得し、より経験値を高める!
タイのチャーンインターナショルサーキットを舞台に、スーパーGTシリーズの第7戦、「Chang SUPER GT RACE」が10月7〜8日に開催された。全8戦での開催が予定されるシリーズに、今年もaprは2台のトヨタ プリウスZVW51を走らせ、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」を昨年に引き続き、永井宏明選手と佐々木孝太選手に託すこととなった。
年に一度のアジアラウンドが、タイで開催されるようになって今年で4回目。戦いの舞台である、チャーンサーキット最大の特徴は、コースの前半部分と後半部分の性格がまったく異なることだ。前半は極端に言えば、3本のストレートをほぼ直角のコーナーとヘアピンで結ぶハイスピードセクション。しかし、これを過ぎた後半は中速から高速コーナーが巧みに組み合わされた、超テクニカルセクションなのだ。一見すると、ストレートパフォーマンスに優れる車両が有利だと思われるが、実際にはフルブレーキングを要する区間が少ないことから、コーナリングマシンの方が圧倒的に有利とされ、実際に昨年はマザーシャシーによって、ポール・トゥ・ウィンが飾られている。
なお当初より蓄電装置である、リチウムイオンバッテリーの海外持ち出しが禁止されているため、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は、このアジアラウンドにはハイブリッドシステムを外して挑む予定だったが、その部分にトラブルが相次いだことから、ラスト3戦を非搭載で戦うことに。前回のレースは駆動系トラブルでリタイアを喫したが、鈴鹿1000kmという長丁場の大半を走り続けたことで、ハイブリッド非搭載状態のデータは、これまでになく蓄積されていた。
公式練習 10月7日(土)10:10〜11:45
タイでのレースは4回目ながら、昨年からスーパーGTに挑んでいる永井選手にとっては、2回目の挑戦となる。そこで走り初めとなる公式練習では、普段のレース以上に永井選手の習熟に時間が割かれることとなった。しかし、ひとつ大きな問題も。過去3年間、雨季でもあるにも関わらず、一度もセッション中の降雨に見舞われずにいたのに、公式練習の直前に行われたサポートレースは激しいスコールによって、水浸しになってしまっていたのだ。「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」に、チェックを兼ねて最初に乗り込むのは佐々木選手。10分間の走行を行い、すぐピットイン。その後もウェットタイヤでイン〜アウトを繰り返し、完全なドライコンディションに転じてから、ドライタイヤで本格的な走行を開始する。佐々木選手のベストタイムは1分35秒463。
残り40分を切ったところで赤旗が出て、再開後からは永井選手の走行となった。しっかりと丁寧に、ラインを最初のうちはトレースしていた永井選手だったが、やがて1分36秒台をコンスタントに記録するようになる。GT300単独セッションの開始直前にピットに戻っただけで、予定どおりロングランをこなした永井選手のベストタイムは1分36秒049。本戦に向けて、確かな手応えが得られたようだ。
その後に行われたサーキットサファリも永井選手から走り始め、1周の計測の後、佐々木選手に代わって最終チェックが行われることに。最後の計測では2分1秒386が記されることとなった。
公式予選 Q1 10月7日(土)15:00〜15:15
公式予選の前にもまたスコールが、今度は嵐のような勢いで降って、せっかく乾いた路面を再び濡らしてしまう。Q1までにはやんだとはいえ、強い日差しが注がなかったこともあって、ウェットタイヤを装着して佐々木選手は、コースオープンと同時に走行を開始する。まずは1分42秒785を記録したところで、一度ピットに戻って路面状態の向上を待ち、終盤に再度コースイン。
佐々木選手は「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」を果敢に攻め立てて1分41秒485をマークし、さらなる短縮を狙ったものの、勢い余って最終コーナーでスピンしてしまう。ラストアタックにすべてをかけたものの、すでにタイヤのピークは過ぎており、1分42秒007とタイムアップならず。それでも14番手につけて、Q1突破に成功。Q2で待つ永井選手にバトンを託すことに成功した。
公式予選 Q2 10月7日(土)15:45〜15:52
路面状態の向上もあって「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」にはいったんドライタイヤが装着されたが、まだ性能を発揮できる状態ではないと判断され、開始直前になってウェットタイヤに変更。そのため、3戦連続でQ2に挑むことになった永井選手は、他のマシンとはややタイミングをずらしての走行開始となった。いわゆるダンプコンディションの難しい状態に対して、1周を慎重にウォームアップに充ててからアタックを開始。いきなり1分41秒802という好タイムをマークする。
その後、もう一回アタックをかけたものの、ここではタイムアップは果たせず。しかし、13番手につけて「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は、決勝レースを7列目イン側のグリッドからスタートを切ることが決定した。
ポジションは14番手ではあったが、大幅にセットを改め、まだ完全ではない状態である。しかも、レースは1000kmにも及ぶ長丁場。作戦や展開次第では、十分チャンスのあるポジションだ。「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」が、どこまで順位を上げてきてくれるのか、大いに期待が高まることとなった。
永井宏明選手
「このこーすをはしるのはさくねんにつづいて2かいめなので、はしりだしからすむーずでしたし、しっかりくるまのかんじもつかんで練習できたので、いい立ち上がりとなりました。Q2の感触としては、クルマは問題なく仕上がっていたんですが、失敗した部分も多かったし、攻めきれないところもあったんですけれど、まずは経験を積めたのでよかったと思います。しっかり結果につなげられるような位置からスタートできるので、決勝は頑張ります!」
佐々木孝太選手
「Q1通過は、僕的にはよくできたと思います、難しいコンディションの中、一発タイム出せてQ1通れて。永井さんにちょっとでも走る機会をと、さすがに雨の難しいコンディションでは無理かな……と思っていましたが、それができて良かったし。永井さんは本当にいいパッケージングで行けば、いいタイムを出せるところまで来ていたので、それは本当に嬉しく思います。しっかり次につなげてもらえれば。決勝は正直、ストレートが厳しいので勝負にはなりにくいでしょうが、予選のようなコンディションになった時に何らかのチャンスが残っていると思うので、最後まで諦めずに走ります。」
金曽裕人監督
「永井選手にとってGTでのウェットコンディションのアタックは初めてだったので、かなり攻めすぎて、まとめきれませんでした。このサーキットは2年目で走行経験が少ないから仕方ない。だからこそ、Q2でのアタックは、今後の為になりました。なにより、永井選手のファイターとしての攻めの姿勢を見られた事が、非常に嬉しかったです。決勝に向けては、しっかり作戦は立てているので、そう悪くない位置からのスタートだと思います。孝太に関しては、格の違いを見せてくれました。さすが!!としか言えません。」
決勝レース(66周) 10月8日(日)15:00〜
今回は20分間のウォームアップの前にサーキットサファリが行われ、コース上をバスが走るとはいえ、日曜日の貴重な走行の機会が増やされることとなった。いずれも走り出しはスタートを担当する佐々木選手から。サーキットサファリではイン〜アウトを行った後、本格的に走行を開始し、まずは佐々木選手が1分36秒634をマークする。続いてラストの5分間を永井選手が走って1分37秒048を記録する。10分間のインターバルを経て、ウォームアップでは佐々木選手が1分35秒109にまでタイムを伸ばし、このレースウィークのベストタイムをあっさりと更新。その後、ドライバー交代の練習も行なって永井選手が「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」に乗り込み、チェッカーが振られるまで周回を重ね、最後に1分36秒570を記していた。
さて、本来タイのレースといえば、熱心なファンがたくさん訪れ、その期待に応えるかのように派手なセレモニーも行われてきたが、今年は国王の逝去からまだ1年も経たず、国全体が喪に服しているため、例年に比べると控えめ。それでもグリッドに全車並べられると興奮が抑えきれないようで、スタンドからは声援も上がっていた。
その決勝レースはようやく完全なドライコンディションでの戦いとなると思われたが、またしても雨がポツリポツリ……と。土曜日までのような長く、強いスコールではなかったものの、やはり路面は濡らされてし
まう。しかし、路面はまもなく乾いてしまうことが公式練習で確認されていたこともあり、チームと佐々木選手の判断は、ドライタイヤの装着! これが吉と出るか、凶と出るか。
レースはセーフティカースタートから開始され、わずか1周の先導でグリーンシグナルが点灯されることとなった。予想外だったのは、グリッド上での印象以上にコースは濡れていたことで、佐々木選手はずるずると順位を落とし、6周目にはウェットタイヤを装着するトップに周回遅れとされてしまう。だが、10周もするとタイヤの違いによるタイムが逆転するようになり、そこからは佐々木選手の真骨頂が発揮。やがて同一周回に戻すとともに、上位との差も周回ごと秒単位で詰まっていく。本来ならば規定周回ミニマムの20周前後まで走り続けたいウェットタイヤ勢も、堪えきれず続々とピットに戻ってくる中、佐々木選手の順位も自動的に上がり続ける。
36周目になってようやく「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」はピットに戻ってきて、佐々木選手から永井選手にスイッチ。その間に4番手にまで浮上していた。だが、いざコースに戻ってみると、スタートからしばらくの間に抱えた遅れは、予想外に響いていて17番手での折り返しに……。45周目にポールポジションを獲得して序盤のトップを走っていた「アウディR8」が、電気系トラブルで戦列を離れたことから、永井選手はひとつポジションをアップ。この頃には前も後ろも離れた状態であったことから、永井選手はタイムの安定を心がけるように。1分36秒台でコンスタントに周回を重ねられたこと、そして何よりノートラブルで走り続けられたことは自信にも、そして前回までの不安材料の一掃にもつながったはずだ。
今回の「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」の最終結果は16位。しかしながらトップから1周遅れに留めたことで、チームランキングではしっかり3ポイントを獲得した。残す戦いはツインリンクもてぎでの最終戦のみ。
ここで来シーズンにもつながる走りを見せて、すっきりとシーズンオフを迎えられたら最高である。
永井宏明選手
「我々に向いた条件とはならなかったのと、僕のスティントではなかなかタイムを上げられなかったので、まぁ完敗な感じですね。クルマのトラブルも一切なかったのは良かったです。もう最終戦だけになってしまいましたが、今度もトラブルなく、気持ちよく終わりたいですね。」
佐々木孝太選手
「どうしてもポイントが獲りたかったので、冒険するしかなかった、というのが正直なところで。冒険したけど、本当の冒険に終わってしまいました。まぁ、ドライタイヤのペースも悪くなかったので、ウェットタイヤ
で行って早めに換えて、という作戦もありだったかもしれませんが、僕らの中ではベストな選択だったと思います。チャンスはなかったけれど、ペース的には悪くなかったので、次にはつながると思うので、茂木は厳しいけれど、来年に向けていろいろ考えることができます。」
金曽裕人監督
「スタート時のタイヤ選択ですが、あのウェットの状態で走れるタイヤが他のチョイスとしてはなかったので、そういう作戦しか採れなかったというのが、正直なところ。なので最初からドライタイヤで行った孝太は、いい仕事をしてくれたと思います。永井選手に関してもレース中にどんどん進化し強さも出てきましたので、トータルな結果としては満足です。きっちり完走して同一周回ポイントが目標でしたから、それは達成できました。とはいえ、まだまだ速さの磨き上げや、マシン開発に関して、もっとやらなくては、と実感させられたレースでした。」