No.31 TOYOTA PRIUS apr GT
2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 4
SUGO
SUGO GT 300km RACE
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)/3.704km
7月22日(予選)天候:曇り
コースコンディション:ドライ 観客数:9,600人
7月23日(決勝)天候:雨のち曇り
コースコンディション:ドライ 観客数:26,200人
復活の時は間近!? 天気に翻弄されながらも、久々の6位入賞果たす
全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第3戦、「SUPER GT in KYUSHU 300km」がスポーツランドSUGOで開催された。今年もaprは2台のトヨタ プリウスZVW51を走らせ、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」を嵯峨宏紀選手と久保凛太郎選手に託すこととなった。
今年ここまで苦戦を強いられてきた「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」にとって、第4戦を前に朗報が飛び込んできた。BoPが改められて最低重量の40kg増加が条件ではあるものの、リストリクター径が28.32mm×2から28.70mm×2への拡大が許されたのだ。
プリウスGTが搭載するエンジンは、もともとフォーミュラ・ニッポンで使用されていたため、特性としては高回転タイプ。しかし、これまでのリストリクター径では十分な空気量をエンジン内部に取り入れられず、肝心な高回転域で窒息状態になってしまうため、著しいエンジン性能の低下につながっていたのだ。
もちろん、重量増も気になるところだが、それ以上にエンジンの問題解消が効果を発揮できれば……。今年ここまで入賞は第1戦の10位だけで、搭載するウェイトハンデはわずか2kg。エンジンパフォーマンスの復活とも合わせ、昨年は優勝を飾って本来はプリウスGTが得意とする、テクニカルコースのSUGOで逆襲は果たせるか、大いに期待が込められることとなった。
公式練習 7月22日(土)9:00〜10:39
前回のオートポリスから、レースそのものは2か月ほどインターバルを置いたものの、その間にSUGOと鈴鹿で公式テストが、そしてタイヤメーカーテストも行われてタイヤだけでなく、マシンも鍛え続けられてきた。そして、このレースウィークから変更されたBoPへの対応が可能に。チームもドライバーも期待に胸膨らませて、走行を開始することとなった。
うだるような暑さの中、最初に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」を委ねられたのは、もちろん嵯峨選手。セッション開始と同時にピットを離れ、いつものようにすぐ戻ってくる。エンジンの感触は上々のよう。再び走行を開始し、わずか3周で1分20秒台に入れたことで、そのことは明らか。次の周には1分20秒448を出して、嵯峨選手のベストタイムを早々に記すこととなった。その後、決勝セットを詰めていくことになり、残り1時間を切って赤旗が出されるが、そこまでは至って順調。ピットに戻ってセットが変更されるも、短い時間でコースに戻されていたからだ。ちなみに嵯峨選手は29周を走行。
ラスト30分は久保選手が担当し、ロングランを担当することに。途中2度目の赤旗中断があったものの、それ以外はピットに戻らず走り続けた。13周走行した久保選手は、ラスト2周で1分20秒427をマークし、このセッションの最速タイムで確かな手応えをつかんでいた。
公式予選 Q1 7月22日(土)13:10〜13:31
直前に小雨が降ったものの、コースを濡らすまでには至らず。このレースウィークは雨に見舞われるとの予報が出ていたものの、なんとかドライコンディションを土曜日は最後まで保つこととなった。気温28度、路面温度36度は想定内。今回のQ1担当は久保選手だ。「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」をドライブするようになって初めてとあって、走り出しはいたって慎重。しっかり2周にわたってウォームアップを行い、さぁアタックというタイミングで赤旗が出る不運が・・・。
3分ほどの中断で、残り時間は10分として計測再開。タイヤにはすでに熱を加えてあるだけに、今度のウォームアップは1周のみ。しかし、1分20分400、20秒012と短縮は果たすも、これではQ1突破はかなわない。そこで久保選手は1周クールダウンし、ラストチャンスにすべてを賭ける。すでにタイヤはピークを過ぎていたものの、19秒766をマークして14番手に。まさにギリギリのところでQ2進出を果たすこととなった。
公式予選 Q2 7月22日(土)15:01〜15:22
Q1で赤旗中断を挟んだこともあり、当初の予定より6分遅れてQ2がスタートした。Q1からは気温、路面温度とも1度だけアップしているが、コンディションはほとんど変わらないと言ってもいいだろう。久保選手からバトンを託された嵯峨選手は、計測開始と同時にピットを離れていく。またしても、すぐに赤旗が出る不運が・・・。
再開後のウォームアップは1周に留め、ワンアタックを嵯峨選手はきっちりと決めた。1分19秒204をマークし、6番手につけることに。「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、決勝に3列目のグリッドから挑むことが決定した。
嵯峨宏紀選手
「僕も凛太郎もアタックラップの直前に赤旗が出て、若干不運だったなというのは否めない気はします。本来のプリウスとの相性からすれば、6番手というのはSUGOの予選としては悪い方ですが、決勝では天気次第で順位も挙げられるでしょうし、淡々と走って表彰台までは行きたいと思います。今回からのBoP変更は大きいですけど、ただパフォーマンスを相対的に考えると、昨年の位置にはいません。本来だったら18秒の前半にも行っていても、おかしくないマシンだったので。
今回勝ちたい!このまま行ってしまえばシリーズは、箸にも棒にもかかからない状態になってしまうので、いい流れを取り戻すというのが最大の目標です。」
久保凛太郎選手
「ギリギリのQ1通過でご心配かけました。赤旗と、その後のアタックに行った、1コーナーを曲がった瞬間に集団の中に入っちゃって、2周ぐらい無駄にしてしまいました。これはやばいと最後、間隔開けてもう1回行って、なんとかギリギリ。最後に決めようなんて、そんなつもりはありませんでした。でも、いつものブリヂストンタイヤの傾向だと、本当に一発でないと、すごく落ちちゃうところを、今回持ってきてくれたタイヤがすごく保ちも良くて、その後のラップも全然落ちずに走れたので、ブリヂストンさんに感謝です。決勝は雨、降ってくれた方がいいですね。降らなくても心配ありませんが、降ってくれた方が表彰台のチャンスは増えると思います。」
金曽裕人監督
「このレースウィークから40kgの重量増はありますが、昨年のリストラクターがようやく使えるようになって、他のマシンとレースができるようになりました。今まで高回転域では、小さなリストリクターではチョーキングポイントに入って何ともならなかったものが、今回どうなるか非常に楽しみで、サーキット入りしました。実際走らせてみた印象は、やっとプリウスが戻ってきた感じがしましたし、クルマのセットも、タイヤのセットも悪い方向ではないし、これならQ2進出は十分可能だと。凛太郎も、そこそこSUGOを得意としているし、宏紀にとっては最も得意としている部類のサーキットなので、Q1は凛太郎に任せました。赤旗とのタイミングは、ふたりとも運が悪かった。これは致し方ない。ただ、凛太郎の出すタイミングは良くない。ギリギリ通っているけど、本来ならもっとイージーにいいタイムを出せたはず。ドライバーとしてのベースは低くないので、もっと勉強ですね。宏紀に関してはさすがでした。あれ以上は出ません。ブリヂストンが雨を得意としているので、決勝は雨がいいですね。だから3列目から行けるのは、非常に楽しみです。」
決勝レース(81周) 7月23日(日)14:30〜
日曜日は予報どおり、雨に見舞われることとなった。それでもスタート進行の開始とともに行われる20分のウォームアップの頃には雨はやんでおり、それぞれウェットタイヤからの走り出しとなったが、徐々にタイムは上がっていった。しかし、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」の久保選手は、走り始めてすぐ2コーナーでコースアウト! 幸い、それから間もなく赤旗が出されたこと、また自力での脱出なったことで、再開後の走行が許された。最終的には1分30秒006を記すに至り、2番手につけることとなった。
その久保選手が今回もスタートを担当。問題はタイヤチョイスだった。グリッドに「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」が並べられた段階では、もうドライタイヤで十分走行可能な状態にまで路面は乾いていたが、レーダーは近くまで雨雲が近づいていることを伝え、いつ降り出してもおかしくなかった。しかし、フォーメイションラップが近づき、いよいよポツリポツリと……。そこで迷わず、ウェットタイヤを装着することとなった。GT300では3台だけがドライタイヤを装着。
早々に結論を言えば、ウェットタイヤの選択は大正解。パレードラップ、フォーメイションラップのうちに雨は勢いを増し、予想以上に路面に水を浮かべていたからだ。ドライタイヤを選んだ車両はコーナーでアクセルを踏むことすら許されず。そんな厳しい条件の中、久保選手はスタートを決めて、ポジションキープし1コーナーに飛び込んでいくも、オープニングラップのうちに1台に抜かれてしまう。それでも3番手を争う集団の中で、ポジションアップの機会を虎視眈眈と待ち続ける。
5周目から5周に渡り、最終コーナーでのアクシデントの発生でセーフティカーがコースイン。
リスタート後に2番手の車両が接触で後退、しかし13周目に1台の先行を許したことからポジションは7番手のまま。そして、ひとつでもポジションを上げたいという思いは裏目に出て、18周目の2コーナーで久保選手は再びコースアウトしてしまう。すぐに復帰できたのは良かったが、これで20番手にまで後退。ただし、ここからの挽回も激しく、25周目には9番手にまで返り咲く。
その後、1台が早めのドライバー交代を行なったこと、そして35周目には「GAINER TANAX AMG」を抜いて7番手に浮上。それから間もなく2回目のSCランが。すでに雨は上がって、もはやドライタイヤでも十分走行可能な状態になっていたこともあり、SCラン終了後の44周目に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は7番手でピットに戻ってくる。
素早い作業で嵯峨選手は、同じタイミングでピットに入ってきた車両より前でコースに戻るも、他メーカーのタイヤとの温まりの違いもあって、コース上で抜き返されたのはやむを得まい。それでも、まだドライバー交代を行なっていない車両を除けば、6番目でレースを折り返す格好となった。そして、その2周後にまさか3度目のSCランが行われようとは! これによりコースにステイしていた、それまでのトップ3は完全に勝負権を失っていた。
その後は前後ともに間隔が空いて、淡々と周回が重ねられていくこととなるが、しっかりとポジションをキープ。76周の走破を果たして、6位でゴールすることに。そして久々の入賞を果たすこととなった。次のレースはわずか2週間後に、富士スピードウェイで行われる。
嵯峨宏紀選手
「いろいろ反省しなければならないことが凛太郎にはあるでしょうし、うまくまとまれば表彰台には上がれたんじゃないかと思います。ただ、ちょっと僕らにとって不運だったのは、後半路面が乾いてきて、そういうシチュエーションになった時、アウトラップはどうしても僕ら以外のタイヤが速いという部分で、ピットから出ていった瞬間にごぼう抜かれという状況でした。そこが残念でしたが、後半のペースがなかなか上がらなかった部分もありましたので、ブリヂストンさんも含めて、これからしっかり開発して、いい状況を作って後半戦に臨みたいと思います。今回はとりあえず、反省材料しかありません。」
久保凛太郎選手
金曽裕人監督
「ウェットの時のブリヂストンタイヤのパフォーマンスは、予想どおり良かったです! ただ、ひとりで暴れている奴がいたので、しっかり教育しないと必然的に戦力外通告となります。凛太郎はいいものを持っているんですが、荒削りどころか、まだ削るところまで行っていません。そうは言いつつ、彼を選んだのは我々なので、もっとクリーンなバトルができる、速くてかっこいいドライバーにしていきます。次の富士、鈴鹿で一皮剥けた、久保凛太郎を見せられるようにしてみせます。今日は表彰台を取らなければならない大事な大事なレース。これだけの応援してくれる人たち、ご協力いただいてる企業の皆さまの前で、それができなかったのが残念でなりませんし大反省です。とはいえ、宏紀がうまくリカバリーしてくれ彼はマシン、タイヤのパフォーマンスをすべて発揮させてくれたと思っています。」