2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 7
開催地:チャーンインターナショナルサーキット(タイ・ブリーラム)/4.554km
10月8日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:24,249人
10月9日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:27,948人
14位フィニッシュながら、次へ繋がる内容に。
年に一度、海を越えて海外でレースを行うスーパーGTシリーズが、その舞台をマレーシアからタイに移して今年で3年目。昨年は第3戦として6月の開催だったが、初年度同様10月の開催に戻され、シリーズ第7戦として「BURIRAM SUPER GT RACE」が開催されることとなった。
今年から2台のZVW50型のトヨタプリウスでGT300に挑むaprが、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」を託したのは、永井宏明選手と佐々木孝太選手だ。永井選手はルーキーながら、佐々木選手の指導の下、ポルシェカレラカップジャパンやスーパー耐久で、メキメキ実力を高めてきたドライバー。デビュー戦となった、岡山の開幕戦こそスーパーGTの戦い方に戸惑いを隠せずにいたが、学習能力の高さはこれまでに経てきたカテゴリーで実証済である。それが証拠に富士での第2戦では早くも9位入賞を果たし、佐々木選手やチームを感嘆させたほど。その他の4戦でもしっかり完走を果たしている。
さて、今回の舞台となるチャーンインターナショナルサーキットは、ホームストレートの先にも1コーナーとヘアピンを挟んで、さらに2本のストレートが備わる、超ハイスピードレイアウトが最大の特徴でもある。何しろ全長は富士とほとんど変わらないのに、GT300のレコードタイムが3秒も速いと知れば、どれほどのレベルか理解してもらえるのではないか。
加えて、日本から西南に約4500km離れたタイは、気候区分では熱帯に相当するため、厳しい暑さとも戦わなくてはならない。せっかく日本は秋めいてきて、涼しくもなっているというのに……。とはいえ、これら過酷な条件は、ウエイトハンデ4kgの「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」には大きな武器となるはず。ただ、その一方で蓄電装置であるリチウムイオンバッテリーの海外輸送が禁じられているため、今回に限りハイブリッドシステム非搭載となり、併せてBoP重量を35kg追加することとなった。このことが、戦況にどう影響を及ぼすか注目された。
公式練習 10月8日(土)10:00〜11:35
過去2年間、タイでのレースは厳しい暑さとの戦いとなっていたが、走行開始となる土曜日は、どうにも様子が異なっていた。それほど暑くないのだ。しかも、未明には激しいスコールに見舞われ、早朝の路面は濡れていた。これまでセッション中にスコールに見舞われたことは意外にも一度もなかったが、いよいよそういった心配もしなくてはならないのかと、誰もが思ったに違いない。公式練習もウェット宣言が出され、一部に濡れた部分を残していたから、なおのこと。
しかし、間も無く路面は完全に乾き、走行には支障のない状態に戻された。最初に「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」に乗り込んだのは佐々木選手。まずピットアウト〜インを行い、最初のチェックが済んだところで、本格的に周回を重ねていくことになる。佐々木選手はすぐに1分35秒台に入れ、順調そのもの。20分目を過ぎたところで赤旗が出されるも、間もなく再開されると1分34秒台連発の後に、1分34秒766をマークして、これをこのセッションのベストタイムとした。
セッションも40分を過ぎた頃からは永井選手にチェンジ。初めて走るコースということもあり、ピットストップを一回挟んだだけで40分間みっちりと、22周を走行することに。最初の頃は明らかに習熟に徹していたものの、事前に日本でシミュレータを使い学習してきたというだけあって、周回を重ねるごとにタイムが縮まっていく。そして1分36秒台を連発し、35秒台にはあと一歩のところで入れることが適わなかったが、1分36秒035を自己ベストとするまでになる。
GT300単独のセッションは、再び佐々木選手がドライブすることに。ここでのタイムアップは果たせなかったものの、佐々木選手もまたトータル20周の走破に成功。ふたりともハイブリッドシステム非装着のプリウスをドライブするのは初めてだったこともあり、貴重なマイレージを稼ぐことにもなっていた。
公式予選 Q1 15:00〜15:15
またしても予選前には、怪しげな天気となっていた。サーキット上空には黒い雲が被され、周辺ではもうすでに雨が降っているよう。だが、雨は降ったには降ったが、ほんの一時でコースを濡らすまでには至らなかった。ただし、この雲の影響で路面温度は予選より下回るようになってしまう。今回もQ1担当は佐々木選手。コースオープンと同時にピットを離れ、アウトラップに1周を加えて、しっかりウォームアップを行った後、アタックを開始する。
1分34秒433、34秒106を連続して記録するが、本来のターゲットタイムは1分33秒台。そこでいったんクールダウンを行った後、再度アタックをかけるが、今度はクリアラップがとれず。タイヤもピークを過ぎていたことから、チェッカーまで3分を残したところで「#30 TOYOTA PRIUS spr GT」はピットに戻ってくる。残念ながら、あとコンマ3秒及ばず、Q1突破は果たせなかった。そして決勝には19番手からスタートを切ることとなった。
永井宏明選手
「タイのコースを走るのは初めてなので、ワクワクしながら来ました。日本でシミュレータに乗ってきたので、どっちに曲がっているかは分かっていて、それで合わせ込むことが若干できたんですが、もうちょっと改善の余地があるなと思っていました。明日、それを決勝までに合わせ込んで、いい走りが出来ればいいなと思っています。今のところ、まだ楽しむまでには至っていないんですが、コース的には好印象なんで、結果にもそれを出せればいいと思いますし、佐々木選手も言っているように、しっかりクルマを合わせて、自分たちのやれることをしっかりやれれば、いい結果が残るんじゃないでしょうか。」
佐々木孝太選手
「ハイブリッドを下ろしたことは確かにメリットにはなっていないけど、すごくデメリットにもなっていないので、ハイブリッド云々の問題よりも、ヨコハマタイヤを上手に使いこなせていないことの方が、やっぱり大きいですね。決勝は、今回は朝のフリーもあるし、8分間走行を使って、もっともっとタイヤを使いきれるように、本来の性能を出せるようにしてあげられればな、と思っています。」
金曽裕人監督
「Q1はベスト〜ベストで来ていたのに、佐々木選手が『フロントが流れた!』と言ってアタックを止めた周がもったいなかった。プッシュさせていれば33秒6ぐらいまで来たはずなので、Q1は突破できたはずなんですよ。少々のミスがあったとしても、僕らの方からプッシュさせて、『それでもいいから行け』と言わなければいけなかったですね。Q1を突破できなかったけど、クルマの実力は、7〜9番手ぐらいにあったというのが結論で、そのクルマが19番スタートということは、ある程度奇抜な作戦で前に行くしかないと思っています。そこも含めて、タイヤとクルマがマッチしてきたので作戦でも上がっていく、それが決勝のテーマですね。」
決勝日・フリー走行 10月9日(日)9:50〜10:20
日曜日になると、強い日差しが注ぐようになり、ようやくタイらしい気候となってきた。この暑さを待っていたチームも少なくなかったのではないだろうか。午前中のフリー走行で、最初に「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」を永井選手が走らせ、ピットストップなしに11周連続のロングをかける。最後の周には1分36秒314を記し、永井選手も納得の走りができたようだ。このあとは佐々木選手が担当。7周走行し、その間に1分35秒575をマークすることとなった。
なお、佐々木選手はこの後に行われたサファリにも積極的に走行し、バスがいる間には控え目な走りではあったものの、離れた後の短いタイミングに最終チェックを行うことに。その結果、1分34秒999を記録することとなり、少なからぬ手応えをつかんでいた。
決勝レース(66周)15:00〜
フリー走行の終了後も気温はどんどん上がっていき、決勝レースのスタート進行が始まる頃には、気温がピークともなる33度、路面温度はついに44度にまで達していた。スタートを担当するのは、第5戦・富士以来となる永井選手。グリーンシグナルの点灯後、コントロールラインを過ぎてから連続するストレート区間は、モーターアシストを生かせない今回の「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」に試練を投げかけた。特にポルシェ勢にはストレートだけで抵抗を許されることなく抜かれてしまい、オープニングラップを終えたところでの永井選手の順位は22番手。それでも、前方でアクシデントが発生するたび順位を上げ、また、6周目にはタイから出場の86マザーシャシーをかわしていた。
18周目となると、早くもドライバー交代を行うクルマも現れ、本来は「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」もショートスティントの予定だったが、永井選手がコンスタントに周回を重ねていたこともあり、22周目に暫定14番手となったところで、佐々木選手と交代することとなった。この間にいったん24番手に後退するが、他の車両がピットに戻るたび順位を上げて、ひととおり完了した38周目には16番手にまで順位を戻す。さらに52周目には3番手を走行していた車両がクラッシュしてリタイア、58周目にも前方で順位を落としていた車両もあったことから、14番手にまで上がったところでチェッカーが振られることとなった。
トップとの差を1周に収めたことから、しっかり3ポイントを稼いでチームランキングでは16位に。続くツインリンクもてぎでの2連戦は、第3戦代替レースがポイント半減、最終戦はノーハンデとなるものの、ほとんどウエイトに苦しんでいない「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」にとっては、そう大きな影響を及ぼさないかもしれない。しかし、ストップ&ゴーの連続するレイアウトに相性のいいことは、昨年の「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」の優勝で実証済。2レースで少しでも多くのポイントを稼いで、笑顔のままシーズンを終えられることを期待したい。
永井宏明選手
「初めてのチャーンサーキットでスタートを任され、次々と後方から襲いかかってくるクルマには、少々苦労しましたが、スタート直後の混戦を抜けてからは、ペースもそれほど悪くなかったと思います。今年は我々にとって勉強の年。30号車のカローラ三重チームとしては何事も勉強だと思っていたので、しっかりと1年間の成果を、次のもてぎの2戦では出したいと思います。」
佐々木孝太選手
「僕に代わってから今回に関しては、タイヤも最後までしっかりマネージメントできるぐらいのグリップを確保できていたし、ペースも31号車と変わらないぐらいのペースで走れるようになったので、決勝だけを考えるとすごくよかったです。ただ、決勝で着実な進歩を感じましたが、公式練習での遅れが響いてしまいましたし、もっともっと僕らも突き詰めていく必要があるとも。次のもてぎには、またハイブリッドが戻っていろんな要素があるので、ちゃんとその辺を見据えてセットアップを進めて、より精度の高いものにしていければ、もっといい位置からスタートできると思います。もちろん、決勝でもいい成果を残して、いいシーズンオフを過ごせるようにできたらいいですね。」
金曽裕人監督
「このコースが初めての永井選手にスタートを託し、最初はショートで行く計画。スタート直後トルクあるFIA-GT3にポジションを奪われたのは想定内。交代してからの佐々木選手のペースは非常に良くポジションを上げて14位という結果が得られた。ポイントを獲るのが目標でしたが、来年のタイにつながるレースにはできたと思います。最終戦に関しては、プライベートテストも実施したサーキット。永井選手も佐々木選手も得意であり期待できると思います。今年は必ず、シリーズ18位以上のシード権を獲得するのが目標ですので残り2戦は総力戦です。。」