2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 7

 

開催地:チャーンインターナショナルサーキット(タイ・ブリーラム)/4.554km

 

108日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:24,249

109日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:27,948

 

最終もてぎ2連戦に大きく期待をつなぐ、5位フィニッシュ!

8戦で争われるスーパーGTシリーズも、残すはあと3戦に!ラスト2戦はオートポリスの代替レースを含むツインリンクもてぎでの連戦で、しかもウエイトハンデは半減、そして最後はノーハンデとなる。つまりフルハンデのレースは今回までとあって、厳しい戦いに生き残ったチームだけに栄冠をつかむチャンスが与えられる。

そんなシリーズ第7戦の舞台は、日本から南西に約4500km離れたタイ、チャーンインターナショナルサーキットで、今回で3回目の開催となる。その最大の特徴は、富士をも上回るハイアベレージコースであることだ。全長は10mと違わないのに、GT300のレコードタイムの比較で3秒も速いと聞けば、いかほどであるか想像もつこう。加えて、気候分類でタイは熱帯に位置するため、だいぶ日本では涼しくなってきたのに、また真夏に引き戻される可能性も……。どうあれ、過酷なレースとなるのは必至と言えた。

GT300に挑むaprは、今年から2台のZVW50型トヨタプリウスを投入。ブリヂストンタイヤを装着する「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」を、昨年に引き続き嵯峨宏紀選手と中山雄一選手がドライブする。開幕からの2戦は産みの苦しみを味わうも、マシンの熟成は徐々に進んでいき、その成果が最初に現れたのが第3戦のSUGO。予選2番手から力強いレースを見せ、初優勝を飾っている。

そして、前回の鈴鹿1000kmでも2位入賞。目まぐるしく変わる天候に若干翻弄もされたが、ピット戦略も完璧に今季2回目の表彰台に上がることとなった。その結果、ドライバーランキングでは2位に浮上。トップがハンデ上限の100kgにほぼ達しているのに対し、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は76kgとあって、差を詰める可能性は十分にあり!異国での大活躍に期待がかかった。

公式練習 108日(土)10:0011:35

土曜日のチャーンインターナショナルサーキットは、確かに暑いには暑いのだが、これまでに比べると、それほどでもないというのが正確な印象か。また、未明には激しいスコールが降り、早朝の路面はウェットコンディション。過去2回はセッション中の降雨は一度もなかったのだが、いよいよそんな心配も……と思われた一方で、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」が装着するウエットタイヤのパフォーマンスは、高い定評を誇る。もし、雨が降ったとしても、かえってマージンを得られる可能性もあった。ただ、公式練習が始まって間もなくは、路面の一部が濡れていたこともあって、ウェット宣言も出されたものの、瞬く間に乾いて、それぞれドライタイヤで十分走行可能な条件になっていた。

最初に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」のシートにおさまったのは嵯峨選手。まずはピットイン〜アウトでチェックを行い、セットを調整した後、開始10分目から本格的な走行が開始される。周回を重ねるごと嵯峨選手はタイムを縮めていき、まずは134912が記録された直後に赤旗が。すぐに再開されてリズムを切らさずに済んだのは何より。その様子は、走行再開後に133927という、ターゲットとされるタイムがすぐに記されたことで明らかだ。

その後ピットに戻ると、そこからは決勝モードのセットに変更して細かく確認を行ったのちに、ほぼ1時間が経過した頃から中山選手の走行になっていく。135秒台をコンスタントに記していくのは、まさに中山選手ならでは。いったんピットに戻り、さらに微調整を行うと、GT300の単独セッションでは134272というクラス5番手のタイムを記録し、上々の滑り出しとなっていた。

公式予選 Q1 15:0015:30

今回、予選Q1を担当したのは、第4戦・SUGO以来となる中山選手だった。その予選を前にして、サーキット上空には不穏な黒い雲が。周辺では明らかにスコールに見舞われており、路面が濡らされるのも時間の問題かと思われた。しかし、一時的に雨は舞う程度で、濡れるまでには至らず。結局、完全なドライコンディションでの走行となった。

計測開始から3分ほど経ったところで「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」がコースイン。雲で覆われたせいか、気温こそ公式練習より上がって30度になったものの、路面温度は逆に下がって28度に。このコンディションに対応すべく、中山選手は実に4周もの間ウォームアップを行っていた。そしてワンアタックを完璧に決めて2番手をコンマ4秒も突き放す、132884をマークすると、チェッカーを待たずにピットに戻ってきた。後の3分間に逆転する者など現れようもなく「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はトップでQ1を突破することとなった。

公式予選 Q2 15:4515:57

Q1の終了から、嵯峨選手は中山選手からインフォメーションを受け、同じ周回数をウォームアップに充ててからアタックを行うこととなった。ただ、Q2が始まる前にまた暑い雲が現れ、これがどうやら路面温度を僅かに下げてしまい、コンディションを著しく変化させていた。

予定どおり4周のウォームアップの後、アタックをかけたが、まずは133363を記すに留まり、もう1周続けていくも33471と、タイムアップならず。納得のいかない嵯峨選手は1周のクールダウンを挟んで、再度アタックを試みるも、タイヤのピークはすでに過ぎており、134150を記すのがやっと……。そのため、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は4列目、8番グリッドから決勝レースに挑むことになった。

嵯峨宏紀選手

「なんか今ひとつ内圧を上げきれなくて……。予定していた周回にアタックしたんですが、タイヤが微妙に動いちゃう感じでした。急にQ2の時に曇ってしまい、路面温度が下がってしまったのもあるのかもしれませんね。中山選手とは同じタイミングでアタックしていたんですが、少しずれてしまったみたいで、その辺は今後の課題です。どうやら慎重に行きすぎてしまったようです。ただ、決勝に向けては悲観したものではなく、別になんとでも作戦は立てられます。」

中山雄一選手

「今日の朝は決勝を見据えたテストをしていたんで、予選で初めてプリウスのいい状況で走ったんですけど、そしたら自分でもびっくりするようなタイムが出て、Q1は楽々通過することができて、それは良かったと思います。でも、Q1からQ2にかけては、ものすごく路面のコンディションが変わっちゃって、路面温度が下がったので、そこに合わせ込むことが出来なかったのかなと。僕の時でちょっとタイヤが温まらないなぁという雰囲気があったので、それが悪い方向にいってしまったという感じがします。ただ決勝は、雨も晴れも自信があるので、いつもどおりやるだけです。」

金曽裕人監督

「中山選手がタイムを出してきているというのは、タイヤのレンジも柔らかいし、戦略的なものもあるんですが、それにしてもビックリするようなタイムが出ましたね、という感じで想定外。嵯峨選手に関しては昨年同様のミディアムタイヤだから想定内なんですけど、慎重にアタックしすぎて、タイヤのいちばん美味しいところを逃したがロングライフなものを選択しているので、タイム差が出るのは当たり前。明日のレースには前の方からスタートしたいという気持ちはあったんですが、戦略的にはいろんなことが出来るサーキットなので、レースが終わってみれば、表彰台の一角にはいたいな、というのが希望的観測ですね。どちらのタイヤでもいいデータは取れたので、抽選で決勝タイヤが、ソフトタイヤでもミディアムタイヤでも、期待してもらえればと思います。雨の心配もありますが、雨ならかえって元気になってくれるでしょう!」

決勝日・フリー走行  109日(日)9:5010:20

日曜日になると朝から強い日差しが照りつけるようになり、いよいよタイらしさが戻ってきた。午前中に行われたフリー走行から気温は32度に達し、路面温度に至っては39度にも!これが予選で……と、舌打ちしたチームもきっとあったに違いない。そんな状況においても「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は順調そのもの。嵯峨選手が走り出すと、周回を重ねるごとタイムを刻んでいき、134718を記したところで、いったんピットイン。そこから先は中山選手の走行となる。 

中山選手はイン〜アウトを行ってフィーリングを確認、セットの微調整を行うと、そのままチェッカーが振られるまで走り続けた。決勝セットでも7番手に相当する134617をベストとできるあたりに、大いなる期待が抱かれるようにもなる。なお、中山選手はその後のサファリにも走行して、バスが離れた後の終了間際には、134295にまで短縮を果たしてもいた。

決勝レース(66周)15:00

フリー走行の後も高まり続けた温度は、スタート進行が始まる頃には気温を33度、路面温度を44度にまで上げて、このレースウィークのピークも達していた。この暑さをまるで喜ぶかのように、グランドスタンドの大観衆は白熱の声援をドライバーに贈っていた。その興奮ぶりは、日本のレースファンを上回っていた、と言っても過言ではないだろう。今回もスタートを担当するのは嵯峨選手。8分間のウォームアップは、1周だけの走行に留めてタイヤを温存。そのことはまた、セットが完璧に決まっていたことも意味していた。

スタート直後の「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、オープニングの1周だけで10番手にまで落ちていたが、それは想定の範囲。1コーナーを抜けてからのヘアピンを挟んだ2本のストレートでは、トルクフルなFIA-GT3勢の方が有利であるからだ。しかし、嵯峨選手は先行を許した車両にも遅れることなく続いていき、逆転の機会を待つことに。14周目には1台、16周目にも1台とかわし、さらに18周目には早めのタイヤ交換を強いられる車両もあったことから、6番手に浮上。その後も先行車両のピットストップのたび順位を上げて、暫定4番手となった25周目にピットイン。

この間に順位を落とした中山選手だったが、全車一通りドライバー交代を終えてレースが落ち着きを取り戻していた時には8番手に。さらに41周目には1台を交わして7番手に浮上する。続いて迫ったのはポルシェだったが、ストレートが速いため、なかなか抜きあぐねて前に出ることは許されずにいた。その間、3番手を走行していた車両にクラッシュがあったため、またポジションをひとつアップ。件のポルシェも、56周目にようやく抜き去り、5番手に浮上する。ただ、さらなるポジションアップを狙いたいところだったが、もはや残り周回は少なく……。4番手の車両に2秒差にまで迫ったところでチェッカーが振られてしまう。

5位でゴールした「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、結果的にドライバーランキングを5番手に下げてしまったが、トップとの差は10ポイントに抑えることとなった。残す2戦はいずれもツインリンクもてぎが舞台。昨年、優勝を飾って最後を締めた、非常に相性のいいサーキットである。いずれもガチンコバトルになるのは、もはや必至であるが、目指すはもちろん2連勝での王座獲得だ。

嵯峨宏紀選手

「プリウスはこのコースとの相性がそんなにいい方ではなくて、やっぱりスタート直後に混走のFIA-GT3に飲まれてしまうというシチュエーションが毎年あって、今年も少しスタートで順位を落としたんですが、その後はマシンのパフォーマンスも良く、タイヤも良く、一台一台処理していくことができました。ペースも悪くなかったので、セーフティカーが出る可能性も見越して、いつもどおりショート〜ロングで中山選手に代わりました。いろいろあって5位でしたが、チャンピオンシップを考えれば、今回61号車の前でゴールするのが最低限の課題だったので、それは達成できたというか、全体的なポイント的には近づくことができたので、それは良かったかな、と思っています。あと、25号車が今回強くて、ランキングではトップに立たれてしまったんですが、最終大会は2回のもてぎですから、その2回を確実に使って、しっかりとやっていきたいと思っていて、そうなればチャンピオンの可能性は確実に出てくると思います。」

中山雄一選手

「実質8番手から後半のレースを担当したんですが、ペースは思ったより良くなくて。嵯峨選手の担当していた前半の感覚からすれば、もうちょっとペースはいいのかな、と思っていたんですが……。それでもだんだんと追いついていって、33号車のポルシェにだいぶ追いついていったんですが、それをパスするのに10周以上かかってしまって、なんとか抜いた時にはもう残り5周ぐらいだったのが残念です。このコースは、パワーのあるクルマではないと簡単には抜けないですね。それと予選の重要性も改めて感じました。次のもてぎは最後ですから、みんな攻めた作戦を取ってくると思うんですが、僕らはしっかり今シーズンのデータを見直して、最後二つとも勝つつもりで行きます。それに見合った作戦を練って準備をして、確実にやっていきたいと思います。」

 金曽裕人監督

「ショート、ロングの作戦は セカンドスティントにタイヤ無交換マシンが多数存在から大きなアドバンテージはならなかった。また、重さも影響し5位が限度でした。今回の目標が5位以上だったから、まぁ最低限クリアできました。それに今年3回目のポイントが獲れた事も収穫。今後、タイヤ無交換作戦は必然になると感じさせられた。残り2戦は昨年優勝サーキットのモテギ。雨が降って去年の最終戦の再来ができればトップと10ポイント差は逆転できチャンピオン。そう思っています!」