2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 4
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)/3.704km
7月23日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:8,900人
7月24日(決勝)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:29,500人
初のスタートを永井宏明が決め、佐々木孝太に繋ぎ
18位完走!
スーパーGTシリーズ第4戦がスポーツランドSUGOを舞台に、夏休み最初の週末に開催された。本来ならば第3戦がオートポリスで開催される予定だったが、熊本地震の影響で施設にも損傷があり、代替レースがツインリンクもてぎの最終戦と併せて開催されることに。そのためレースそのものは2ヶ月ほどインターバルを置くこととなったが、その間に「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は、公式テストやプライベートテストを行い、しっかり準備を整えてきた。
永井宏明選手と佐々木孝太選手がドライブし、タイヤはヨコハマを装着する、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は、開幕戦の岡山国際サーキットで14位完走、そして第2戦の富士スピードウェイでは早くも9位入賞の成績を収めている。特にルーキーの永井選手にミスのないのは、大いに賞賛すべきポイントだ。GT300といえどまわりは猛者揃い。百戦錬磨のドライバーたちに、少しも臆すことなく走り続けているのだから、並のジェントルマンドライバーではない。
今回の舞台、スポーツランドSUGOはアクセルを踏んで回るコーナーの多い、典型的なテクニカルレイアウトで知られ、アップダウンに富んでいる上に、コース幅の狭い超難関でもある。少しでも気を抜けば、接触やコースアウト、果てはクラッシュも待ち構えているだけにドライバーの技量は大いに試される。ここまでのいいムードを保って、どこまで順位を上げていくのか注目された。
公式練習 7月23日(土)9:15〜10:57
土曜日の早朝から、いつもどおり公式練習が開始された。気温は20度、路面温度は25度。これはSUGOで行われた公式テスト2日目とほぼ一緒とあって、データが大いに活かされることが期待された。「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」に佐々木選手が乗り込み、計測開始と同時にコースイン。ピットイン〜アウトを2回繰り返し、マシンチェックを行った後、本格的な走行が始まった。
しかし、開始早々から1分20秒を切るチームが続々と現れる中、今ひとつタイムは伸び悩み、ピットストップの度にセットを改めるも、劇的な改善は見られず、20周目にようやく1分19秒920をマークすることとなった。その後、永井選手にドライバーチェンジ、残り40分を担当することに。
比較的ロングをかけての走行となった永井選手は、まずはコンスタントにラップを刻むことに集中、スピードを試すのはGT300単独のタイミングを予定していた。ところが、その直前にクラッシュがあり赤旗が提示。残り時間を思えば終了の可能性もあり、そうなれば一抹の不安を残すところだったのだが……。幸い、7分間の中断で計測は再開され、永井選手はアタックモードに入っていく。徐々にタイムを縮め、ラストラップには21秒639をマークすることとなった。
公式予選 Q1 7月23日(土)14:30〜14:45
Q1回指示の気温は21度、路面温度は26度と、公式練習とほとんど変わらず。インターバルにミーティングを行い、セットの方向性を改めることとなったため、コンディションが変わらなかったことでひとつ不安要素を潰したことになる。
今回もQ1を担当するのは佐々木選手。SUGOは赤旗が出やすく、それによってアタックのタイミングを逸することも多いため、あえてピットで待機せず、計測開始と同時にピットを離れていく。しかし、佐々木選手はなかなかアタックを開始しない。
これはタイヤの内圧が想定どおりに上がらなかったため、ウォームアップに多くの時間を割いたためだ。ところが、それでも暖まりは十分ではなく、不本意な状態でのアタックは1分19秒337を記すに留まり18番手に。ピットで待つ永井選手に繋ぐことが出来ずに予選は終了。「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は9列目から決勝レースに挑むこととなった。
永井宏明選手
「練習走行では、まだ乗りにくさが残っていましたので、佐々木選手と金曽監督、エンジニアとしっかりミーティングして、決勝には乗りやすいクルマにしたいと思います。明日は少しでも前に行けるよう、そして僕の技術ももう少し磨けるように、そんな一日にしたいと思います。気持ち的にはもっと速く走りたい、そう強く思っているので、そうなれるように頑張ります。」
佐々木孝太選手
「練習の時はオーバーステア過ぎるな、というのがセット変更したら、もうアンダーステアしか出なくなってしまって……。全然タイヤも内圧が上がってこないので、じっくり上げていこうと思ったんですが、最後までアンダーステアでした。ギリギリでもいいからQ1通って、永井選手に繋げたかったんですけどね。かなり厳しい位置からのスタートなので、戦略をしっかり立てないと。なかなか上位にはいけないと思っています。ただロングに関しては問題無さそうで、タイヤも硬めを選んでいるので、その点には強さはあると思いますから、そのあたりを鍵としたいですね」
金曽裕人監督
「クルマと、ヨコハマタイヤのマッチング、ここが最大の課題です。バックアップデータの少なさが、今回特に結果に表れてしまった。パフォーマンスの高いタイヤを僕たちが合わせきれていない。それが最大のネックであり両ドライバーには申し訳ない。僕らの技量を上げていかなくてはならない。ただ、ロングは非常にいい感触を公式テストから抱いているので、明日はじっくりレースをやろうと思っています。」
決勝日・フリー走行 7月24日(日)9:00〜9:30
土曜日までは雲こそ出ていたが、ドライコンディションが保たれていたのに、日曜日は未明のうちに降った雨によって、早朝の路面はうっすらウェットコンディションに。フリー走行が始まる直前は霧雨が舞う程度で、やがて回復に向かうと思われたのだが……。開始早々、コースアウトする車両があって赤旗中断。自走で戻ってきたため、すぐに再開されるも、その間に本格的な雨が降り始める。最初に「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」を永井選手がドライブ。ウェットコンディションの感触を確認し、1分33秒790をマーク。その後、佐々木選手と交代し、車両と路面の確認作業を行った。
決勝レース(81周)14:00〜
ゴールデンウィークの富士には及ばぬまでも、SUGOにもほぼ3万の大観衆が集まり、改めてスーパーGTの人気の高さを感じさせることとなった。すでに夏休みに突入したせいか、子供連れの家族も多く見られ、その中からレーシングドライバーを目指す子供がひとりでも多く現れることを期待したい。さて、肝心の路面だが、雨は降ったり止んだりを繰り返していたが、スタート進行が始まった頃には止んでおり、ほぼドライコンディションに転じていた。ただ、時折り小雨が舞うのが厄介なところではあったが。結局、全車がドライタイヤを装着して決勝レースに挑むこととなる。
スタートは初めて永井選手が担当。やや緊張の様子も見受けられたが、集中力は切らさなかったようだ。グリーンシグナルの点灯と同時にアクセルを踏み込み、難なく1コーナーをクリアしていく。その背後では接触もあっただけに、少しでも躊躇があったなら巻き込まれていた可能性も。オープニングラップのポジションキープに成功する。
それからしばらくのトラフィックにも、そして次々と後方から襲いかかるGT500車両も難なく対処し続けた永井選手。24周目に最終コーナーでクラッシュがあり、回収のためセーフティカーが28周目まで走行。次の周のピットロードオープンと同時に「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」はピットイン。佐々木選手に交代する。
その時点で22番手まで後退するが、まだドライバー交代を全車が行っていないため、自らも抜き続けながら、次第に順位は上がっていき、暫定13番手に。終盤にもバトルを続けたが、想像以上にタイヤの摩耗が厳しく必死にガードを固めたものの、佐々木選手は順位を落としてしまう。そして、70周目には最終コーナーで激しいクラッシュがあり、赤旗によってレースは終了。やや不完全燃焼感を佐々木選手は残すこととなったが、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」はトップから1周遅れの18位完走を果たすこととなった。
この結果に満足できようはずがないが、次のレースはわずか2週間後、8月6〜7日に富士スピードウェイで開催される。気持ちを切り替え、好結果を残すことが期待される。
永井宏明選手
「初めてスタートを担当させてもらって、思った以上にスタートはこなせたと思うので、それはそれで良かったですし、GT500の集団が後ろから来るのも上手に見ながら、自分のクルマをコントロールできたので、いい経験になりました。クルマ的にはうまくバランスを合わせ切れなくて、なかなかタイムアップもできない状態でしたけど、佐々木選手もよく頑張ってくれて、最後までゴールできましたので、そういう意味では次につなげられるレースになったと思います。次に向けて、もう一度しっかり準備していきたいと思います。」
佐々木孝太選手
「今回同じクルマである31号車が優勝しているので、ちょっとでもその位置に持っていけるようにしないといけないし、そのために僕がいると思っているので。もう少し、ヨコハマタイヤとプリウスのマッチングをちゃんと出せるように、セットを見つけないとダメだなという感じですね。もうちょっといい状態で永井選手に、走ってもらえるようなクルマを作らないと、今の状態だと僕ですら厳しいのですから、永井選手はもっと厳しいと思うので、乗りやすくて速いクルマを作ってあげたらな、と思っています。」
金曽裕人監督
「レース後にドライバーと話して、デジタル的な評価を今後もっと行っていくことにしました。今回の結果が、僕らの持っている能力のレベルだから、先に行くためデジタル的な設備を用い、次のパフォーマンスを見出していきます。ただ、今回得られた大きな収穫は、永井選手を初めてスタートで起用しましたが、『素晴らしい!』の一言。だから、彼の頑張りに対して僕らが応えられるように、チーム側がエンジニアリング力をもっと磨かなければいけない。その磨かなくてはいけない背景というのは、タイヤのもつキャラクターの引き出し方です。タイヤはパフォーマンスが高く、今回GT500の優勝はヨコハマなのに、僕らはまだそのパフォーマンスを使い切れていない。そのところを今後もっともっと磨かなければいけないと思っています。でも、今後がとても楽しみ。二人のドライバーの能力が高いからね、。永井選手はただのジェントルマンドライバーではないなぁと。それには僕からも太鼓判を押しますよ!」