2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 4
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)/3.704km
7月23日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:8,900人
7月24日(決勝)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:29,500人
#31 TOYOTA PRIUS apr GT 嵯峨/中山組が今季初優勝!
スーパーGTシリーズの第4戦が、スポーツランドSUGOで開催された。豊富な車種のバラエティと激しいバトルが魅力のGT300クラスに挑むaprは、今年から2台の新型ZVW50プリウスを投入。31号車を昨年に続いて、嵯峨宏紀選手と中山雄一選手に託すこととなった。タイヤも引き続きブリヂストンが使用される。
ここまでの2戦は、嵯峨選手と中山選手の駆る「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」にとって苦戦が続いた。完走を果たすのみのレース結果となってしまったが、黙って手をこまねいていたわけではない。オートポリスで行われるはずだった、第3戦こそ熊本地震の影響で中止となりブランクが生じたものの、その間に行われた公式テスト、そしてタイヤメーカーのテストに参加。多くのメニューをこなして、マシンに磨きをかけ、一段も二段も進化を果たしていた。
ただ、唯一の誤算は鈴鹿サーキットでの公式テストで、締めを行う際にクラッシュがあり、マシンはダメージを負ってしまったことだ。一時は今回の出場も危ぶまれたほどだったが、メカニックたちの懸命の作業によって修復が完了。そんな努力に応えなければ……と、普段とは違った意識で嵯峨選手、中山選手はサーキットに臨んでいた。
公式練習 7月23日(土)9:15〜10:57
レースウィーク最初の走行となる、公式練習でまず「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」をドライブしたのは嵯峨選手。路面状態が整うのを待って、しばらくピットで待機することもあるが、SUGOでは赤旗が出ることが多く、中断によってメニューを十分にこなせない可能性も無いわけではない。ましてテストで負った傷が癒えているか確認の意味も含み、開始と同時にピットを離れていく。
ピットイン〜アウトを最初に行い、走行に大きな支障がないことを確認した後、本格的な走行を開始。セットアップを普段以上に入念に行うべく、ずっと嵯峨選手はシートから離れず。混走とのセッションはすべてドライブしていたほどで、誰より多い32周を走破。その間に記録した1分18秒461は、クラス7番手に相当した。
そして、間もなく10分間のGT300単独セッションを迎えようとした頃、中山選手が乗り込むと、ほぼ同時にSPコーナーインで激しいクラッシュが。赤旗が初めて出されて計測が中断。これでもし終了となってしまえば、中山選手はぶっつけ本番で予選に挑まなくてはならなくなるが、幸いにして7分間の中断で再開されることに。ようやく走り出した中山選手は9周走り、1分19秒521を記していた。
公式予選 Q1 7月23日(土)14:30〜14:45
今回、Q1を担当したのは中山選手。公式練習以上に赤旗が出る可能性もあるため、計測開始と同時にピットを離れていく。気温は21度、路面温度は26度と低めだったこともあり、ウォームアップはいつも以上に入念に行われ、実に3周を充てることに。最初のアタックこそ1分22秒338と不発に終わるも、次の周には1分18秒170をマークして「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はトップに躍り出る。この時点で難なくQ1突破が確認できていたこともあり、タイヤを温存するためアタックを終了。チェッカーまで5分を残してピットに戻るも、その後タイムを上回る者は現れず、上々の滑り出しとなった。
公式予選 Q2 7月23日(土)15:25〜15:37
GT500のQ1で赤旗中断があったため、Q2は当初の予定より10分遅れでのスタートとなった。中山選手からバトンを託された嵯峨選手は、しっかりインフォメーションを受けて同様にウォームアップを3周行ってからのアタックに。それぞれ1周終えた頃、コースの一部に雨が落ち始めるも、焦りは禁物。最初のアタックで嵯峨選手は1分17秒995をマークして、その時点でのトップに浮上。もう1周アタックに向かうも、そこでの短縮は果たせず、1分を残してピットに戻る。
だが、その後に一台の逆転を許してしまうも、他に17秒台の壁を越える者はおらず、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はフロントロー、2番手グリッドから決勝レースに挑むこととなった。
嵯峨宏紀選手
「ポールはマザーシャシーに獲られてしまいましたが、Q1で中山選手がいいアタックをして、いいインフォメーションをくれたので、自分もいいアタックができました。この順位には満足していますし、まさか17秒台に入れられるとは思わなかったです。鈴鹿テストのクラッシュで、まだまだクルマは完調とは言い切れない状況なので、そのあたりもっと煮詰めて決勝に臨みたいと思います。」
中山雄一選手
「公式練習をもう少し長く走る予定だったんですが、セットアップに時間がかかり、僕は最後の単独セッションだけの走行だったんですが、公式テストでもしっかり走っていたので、焦ることなく予選でもアタックすることができました。トラフィックがすごかったんですが、その間を縫って納得のいくアタックができました。鈴鹿のテストで起きたクラッシュから、今回これだけのパフォーマンスを持ったクルマにまで修復してくれたチームに感謝します。ポールの25号車は速いですが、チャンスがあれば抜きたいですし、優勝目指して頑張ります。」
金曽裕人監督
「鈴鹿のテストでいろいろあって、その後メカニックたちがほぼ不眠不況でクルマを修復してくれました。まだクルマには納得のいかないところもありますが、十分にパフォーマンスをドライバーは発揮してくれました。我々はまだノーポイントで、ウエイトが軽かったのが、ものすごく効いたんじゃないでしょうか。決勝は安パイなレースをやって、しっかりポイントを獲っていかないと。何せノーポイントのチームなので、できるだけ多くのポイントを稼いで今度につなぎたいと思っています。」
決勝日・フリー走行 7月24日(日)9:00〜9:30
夏休み最初の日曜日ということもあって、早朝からサーキットには多くの観客が集まり、最終的には29,500人をおさめることとなった。そんな活気とは裏腹に、フリー走行が始まる頃の路面は未明に降った雨によって、しっとりウェット状態。そればかりか霧雨まで舞っていた。中にはドライタイヤを最初に試したチームもあったが、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はウェットタイヤをあらかじめ装着して嵯峨選手をコースに送り出す。
決勝当日の午前中は暴風雨に見舞われる……。という物騒な天気予報もあったものの、多くの観客が集まってきたことで、大気にも動きがあったのか。実際に雨は降ったものの、早朝にはやんでいて、一時はウェットタイヤを装着することも覚悟のはずが、強い日差しに照らされた路面は瞬く間に乾いていき、フリー走行が始まる頃には限りなくドライコンディションに。
開始早々に赤旗中断があるも、3分で再開。その間に雨は本格的に降り出すように。そんな難しいコンディションにも関わらず、嵯峨選手は周回を重ねるごとタイムを縮め、6周目には1分29秒251をマークして、その時点でのトップに浮上。中山選手に代わって間もなく、いったんはそのポジションを奪われるも、終了間際に28秒台を連発して逆転、28秒089をこのセッションの最速タイムとすることとなった。
決勝レース(81周)14:00〜
スタート進行が始まった頃の路面は、ほぼ乾いており十分ドライタイヤでも走行可能な状態にまで回復していた。8分間のウォームアップ走行でスタート担当の嵯峨選手は最終チェックを行い、万全の構えで決勝に挑むこととなった。今回も宮城県警の白バイ・パトカーの先導によるパレードランがフォーメーションラップの前に行われ、徐々にテンションを高めていった後にグリーンシグナルが点灯!
1コーナーでタイヤの温まりが早いダンロップタイヤの#61 スバルBRZの先行を許すも、遅れることなく続き「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はオープニングラップを3番手でクリア。その後も激しいトップ争いを繰り広げる。
6周目に入るとトップの#25 86MCが逃げ始めるも、その後もしばらく2番手争いは激しく繰り広げられた。レースが再び緊張感を取り戻したのは24周目。最終コーナーでクラッシュがあり、セーフティカーがコースインしたからだ。28周目にセーフティカーが戻り、ピットロードがオープンとなると、すかさず「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はピットイン。中山選手へドライバー交代とともに、スタート時よりも固めのタイヤをチョイスし、4本すべて交換してピットアウト!
トップの#25 86MCが左側2本のみ、中には無交換のチームもあったため、事実上の4番手に後退するが、それがかえって中山選手のオーバーテイクショーに貢献する。まずは58周目に3番手に浮上、さらに59周目のヘアピンでももう1台をパス。次の周にはトップの#88ランボルギーニにも迫るが、ここでの逆転は許されず。
しかし、相手はタイヤ無交換の車両。FIA-GT車両の特性を生かしストレートが速く、1コーナーでのフルブレーキングで必死に堪えるも、もはや「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」に及ぶところではなかった。63周目の1コーナーで、中山選手は満を持してトップに立つ。そこから先は着いてくる者も現れず、逃げ続けることとなった。71周目の最終コーナーでクラッシュがあり、赤旗が出されて本来の予定より5周早い終了に。チェッカーフラッグこそ受けられなかったが、待望の今季初優勝。
そしてZVW50型プリウスにとっての初勝利を飾ることとなった。
勝利の美酒に酔いしれた嵯峨選手と中山選手、感動に包まれていたaprのスタッフながら、そう長く余韻に浸ることは許されない。というのも、2週間後の8月6〜7日には富士スピードウェイで第5戦が行われるからだ。今年のGT300はポイントが例年になくばらけていて「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、これでドライバーランキング3位に浮上。第6戦の鈴鹿も含んだ真夏の3連戦で多くのポイントを稼げば、まだまだ王座獲得のチャンスは残される。荒稼ぎに期待しよう。
嵯峨宏紀選手
「開幕から2戦続けてノーポイントだったので、今回はメンタルもドライビングも最高に集中して臨みましたが、うまくストラテジーがはまって優勝することができて、素直に嬉しいです。僕らは4本換えたのに対し、無交換とか2本だけというチームもあったので、ピットアウト後には何台かに抜かれてしまったんですが、それを中山選手が着実に抜いてくれたので、優勝させてくれてありがとうという感じです。
鈴鹿のテストから時間のない中、クルマを修復してくれたチームの皆さんにも感謝していますし、恩返しもできました。ストラテジーがうまくいったので、これからはこういうレースを続けていけば、チャンピオンの可能性も残されていくと思います。そのあたり、ぶれずにチームとやっていって、富士・鈴鹿で大きいポイントを獲ることができれば最高ですね。」
中山雄一選手
「今年ここまで結果が残っていなかったのですが、夏の3連戦ではみんながミスなくレースして、いい流れを作ろうと思っていました。SUGOとJAF-GTの相性が良く、いい位置からスタートでき、前半の嵯峨選手の走りを受けて、SCラン中の短い時間にブリヂストンのエンジニアと監督が作戦を練ってくれて、僕は少し硬いタイヤで後半のスティントを行きました。4本交換だったので前に行かれたクルマもあったんですが、その4本交換のメリットを生かし、どんどん近づいていって、それでも抜くのはすごく難しかったのですが、GT500や周回遅れの車両がすごくいいタイミングで現れてチャンスが巡ってきて、ひとつひとつモノにしていけたので、いいレースにできたと思っています。今週は、自分たちが最大限できることをやるというのを心掛けていて、実際にみんな100%出し切ったことで、この勝利に結びついたのではないかと思います。決勝ではネガティブな要素は一切ありませんでした。このレースはこの後の富士、鈴鹿に向けて流れを作るレースだと思っていたので、優勝は予想外だったんですが、この先も謙虚な気持ちで挑戦し戦っていきたいと思います。」
金曽裕人監督
「やっと来ました!新型プリウス初優勝!しかもドラマチックにいろいろあって、鈴鹿テストにおいて大きなクラッシュがあり 本当はレースに間に合わないかも……という状況でした。そこからの復活劇としてはものすごいシナリオだったのではないかと思います。今回のテーマは『全員プロの、責任ある仕事をしよう。』というもの。実際、誰ひとりミスがなかった。しかも間に合わないかもしれないというクルマを仕上げてくれたメカニック、スタッフ、ハイブリッド関係者の皆さまに感謝という、それだけの気持ちでやっていたことが、レースの結果に結びつき努力が報われたということだと思います。みんなが同じ方向を向いていたから、勝つべくして勝ち、そして我々を応援くださる皆様の力で勝てたという感じです。その皆様が勝って欲しいと思っていたし、そんな気持ちがプレッシャーではなく、きっちり仕事をすれば、絶対出来るんだという意志にもなりました。今は感動ではなく、達成感でいっぱいです。この勝利で、続く富士・鈴鹿戦にも弾みがつきました。この先もチーム力を見せつけ2台のPRIUSでサーキットを駆け抜けたい。」