2015 AUTOBACS SUPER GT ROUND 7

 

開催地:オートポリス(大分県)/4.674km


1031日(予選)天候:晴れ

コースコンディション:ドライ 観客数:11,340

111日(決勝)天候:曇りのち雨

コースコンディション:ドライ~ウェット 観客数:22,680

 

スピードでは他を圧倒していたが、運だけが足りず。

激戦を重ねてきたスーパーGTも、いよいよ残すところ2戦。まだタイトル獲得の権利を残す嵯峨宏紀選手と中山雄一選手、そして「TOYOTA PRIUS apr GT」を走らせるaprにとって天王山とも言える、シリーズ第7戦が大分県のオートポリスで、1031日〜111日に開催された。

前回のレースで2位入賞を果たしたことにより、ランキングトップとの差はチームランキングで23ポイント、ドライバーランキングで25ポイントとなった。このレースはウエイトハンデが半減されるとはいえ、「TOYOTA PRIUS apr GT」が背負うのは49kgと依然厳しいものの、ここを乗り切れば最終戦はノーハンデ。

もちろん、ほぼ全車に共通する条件ではあるが、より勝機は高くなる。先に天王山と述べたのは、そのため。このレースでランキングトップに先んじてゴールできれば、逆転の可能性は一気に増す。チーム全体が不退転の決意で、九州のサーキットに臨んでいた。

公式練習 1031日(土)9:0010:35

九州と言えば温暖な地という印象が強いものの、すっかり秋の気配を漂わせるようになったオートポリスに関しては話が別である。何しろ阿蘇山系に位置し、その標高は800mを悠に超すのだから。この時期、激しい時で裾野の街とは10度もの温度差があるという。公式練習が行われた土曜日は、日差しこそ強いもの、午前中の気温は10度にも満たず。

さかのぼること3週間前、「TOYOTA PRIUS apr GT」は、オートポリスで行われたタイヤテストに参加。トップタイムとなる1分44783をマークしている。低い気温はエンジンをより回すこととなるが、路面温度が想定域よりも低すぎれば、タイヤは十分にパフォーマンスを発揮できない。そのあたり、実に微妙であったのだが……。

最初にドライブしたのは嵯峨選手。コースインして間もなく赤旗が出るも、特に影響を及ぼすことはなし。約20分間後に再開されて、まずは予選モードに突入する。その結果、嵯峨選手は1分43699をマークしてトップに。低い気温がまったく悪さをしていないばかりか、むしろスピードアップにも貢献していることが明らかになる。その後は、中山選手〜嵯峨選手〜嵯峨選手〜中山選手の順でピットストップごと乗り込み、決勝セットを詰めていった。

ユーズドタイヤでの走行ながら、中山選手のベストタイムは144780と全体の3番手に相当。嵯峨選手が序盤に出したタイムは、最後まで誰にも破られなかった。その後に行われたサーキットサファリも余すことなく、ふたりのドライバーは走り続けて、最終チェックも完了する。

公式予選 Q1 13:3013:45

予選開始時には陽は高く上り、気温は4度上がっただけの12度ながら、路面温度に関しては13度から25度にまで上昇。この温度上昇が予選にどう影響を及ぼすか。Q1担当の中山選手は普段以上にタイヤのウォームアップに時間をかけ、アタックを開始。1分43417をマークしてレコードタイムを更新するとともに、トップに浮上。これで十分と残り6分間を残し早々にピットに戻ってくる。その後にタイムアップを果たせた車両は存在せず。難なくQ1を突破する。余談ながらQ2進出を果たした13台は、すべてレコードタイムを更新。近年は初夏にレースが開催されていたことも多分に影響していようが、今さらながらにGT300のレベルの向上を感じさせることともなった。その中にランキングトップの「GAINER TANAX GT-R」は含まれず、14番手に甘んじていた。

公式予選 Q2 14:1515:27

続くQ2を担当したのは嵯峨選手。中山選手同様、入念にタイヤのウォームアップを行なった後、アタックを開始する。その様子はまさに激走!よりタイムは短縮されて、143002を記録!嵯峨選手が新たなレコードホルダーになることが期待された。しかしその後に「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手が、なんと1000分の1秒という、計測し得る最僅差でトップに浮上し、ポールポジション獲得。「TOYOTA PRIUS apr GT」は2番手から決勝レースに挑むこととなった。

嵯峨宏紀選手

1000分の1秒差で2番手。悔しくないわけではないですが、最低でも2列目には並びたいと思っていましたので、フロントローではあるので予定どおり。タイムも悪くありませんでしたからね。あくまでも重要なのは決勝のアベレージであって、そういう準備はしてきたつもりではあります。いざ蓋を開けてみないと分からない部分はありますが、しっかりレースの組み立てをして、優勝できるような状態を作りたいと思います。

中山雄一選手

チームとしては、やや残念な結果でしたね。僕はアタックを今週初めて履いたニュータイヤで行ったんですが、練習では決勝に向けたセットでずっと走っていたので、予選のセットになると、もうクルマが見違えていて、すごく気持ちいいアタックができました。マシンもすごくコースにも合っていましたし、乗りやすかったですし、タイヤがこの路面温度にバッチリ合っていたので、まさにそれで一番タイムが獲れたと思います。

金曽裕人監督

最終コーナーで息止めればたぶんポールでした。我々としては満足していますし白熱の予選、すごく楽しめました。特にブリヂストンタイヤは一発タイムが出る予選に適したタイヤなので1000分の1秒差で2番手が獲れたと思います。ポールの2号車が履くヨコハマタイヤは間違いなくロングディスタンスに強いので、放されずにじっくり後方からチャンスを狙うレースになるでしょう。シリーズチャンピオンを狙うには優勝以外は狙っていないので 明日は全開で挑みます。

決勝日・フリー走行 111日(日)9:009:30

日曜日のオートポリスは、早朝からあいにくの曇り空。気温は9度、路面温度は11度まで下がったところから、30分間のフリー走行が行われた。最初に「TOYOTA PRIUS apr GT」のステアリングを握ったのは嵯峨選手。ピットアウト〜インだけ行って、すぐに中山選手に交代する。2周目に1分45927を記録した中山選手は、トータルで7周を走行。残り9分となったところで、再び嵯峨選手がドライブする。嵯峨選手は5周して、1分48955がベストタイム。それぞれがコンスタントにタイムを刻み、決勝レースに向けて最終チェックを無事完了することとなった。

決勝レース(65周)14:00

なんと決勝レースを前にして、「TOYOTA PRIUS apr GT」にトラブルが発生。スタート進行の開始と同時に行われる8分間のウォームアップで、ピットを離れられず。エンジンの暖気を行おうとして、クラッチに問題が生じていることが明らかになったのだ。急きょ修復が行われるが、時間は刻々と進んでいき、スターティンググリッドに並ぶことはできなかった。しかし、大分県警によるパレードランの最中に、最後尾になってしまったがピットを離れることに成功!

そこからの嵯峨選手は素晴らしい追い上げを見せた。5周目にはまとめて3台を抜き、6周目にも1台をパス。9周目には15番手に浮上。10周目にはまた1台、11周目にも、もう1台を抜く。そこからもう1台は固いガードに阻まれ、やや時間を要するも23周目に成功。早めのドライバー交代を行っていた車両もあったことから、やがて11番手へ。その間にファステストラップも記していた。

29周目には早々と中山選手に交代。この判断も正解で、序盤に先行していた車両が、次々と「TOYOTA PRIUS apr GT」の後ろに並ぶようになる。そして、全車がドライバー交代を済ませると、中山選手は7番手に。それまでもポツポツと降り始めた雨が強くなると、まわりよりペースが上回るようにもなって、44周目には1台を抜いて6番手に上がり、さらに50周目には2番手を走行していた車両が、タイヤトラブルのため戦線離脱。まさに恵みの雨となって、さらに順位を中山選手は上げていきそうなムードさえあった。

そして、52周目には4番手に浮上したのだが、なんとマシンのリヤから白煙が上がっているではないか!ブレーキング時に後方車両に第2ヘアピンで後方をヒットされ、エアロパーツがタイヤに干渉したためで、間もなく修復を命じるオレンジボール旗が出されてしまう。万事休す……。

その間に15番手まで落ちるが、せめて1ポイントでもと、中山選手はプッシュし続けて最終ラップに2台をパス。意地の13位でのフィニッシュとなったが、ドライバーランキングは4位に、チームランキングは3位に落ちてしまったばかりか、チャンピオンは最終戦を待たずに決まることに。だが、両ランキングとも十分2位につけることが可能ではある。最終戦はノーハンデで挑めるだけに、何としても有終の美を飾ってほしいものだ。

嵯峨宏紀選手

トラブルが起きてしまったのは仕方がないです。運がなかったというか、ツキがなかったというか……。逆にピットスタートに間に合わせてくれたスタッフには、本当に感謝したいです。それからの展開は自分のレース人生の中でいちばんプッシュしたぐらいの勢いで抜いてきましたが、力及ばずという感じで。全力を尽くせたという意味ではすっきりしていますし、雄一も最後までいいペースで頑張ってくれて、あとちょっとで3位というところまで来られたので、そういう意味では力を確認できました。最終戦のもてぎではもう1度勝てるように頑張りたいですし、来年に向けてのデータ蓄積という意味でも重要なレースになりますから、この2週間ドライバーとしてしっかり準備していきたいと思います。

中山雄一選手

7号車にヘアピンで並ばれたブレーキング時に、リアバンパーの角をトンと…。それでエアロがタイヤに食い込んでしまって…。普通にスタートしていれば優勝できるレースだったと思うので少し残念ですけど、ピットスタートには間に合って、ちゃんとレースができたのでそれは良かったと思います。1周遅れだとか2周遅れだと、全然よく分からないレースになってしまったと思うんですけど、みんなの中で走って、どこが速いか、遅いか分かりました。軽くなりコーナーリングのパフォーマンスが上がって、GT3勢とも戦い合えたので、もてぎに向けてはいいデータが取れたと思います。最後は勝って終えたいですね、最初と最後を勝って。有終の美を飾りたいと思います。

金曽裕人監督

今期はシリーズを狙うことばかり考え、毎戦、毎戦全開で挑んできました。ブリヂストンタイヤも初年度から異次元と言える位の素晴らしいパフォーマンスでしたし、それに合わせ、マシン開発を常に行ってきました。そして今回のオートポリスは優勝だけを狙い、全てをピークパフォーマンスに合わせ挑みましたが、このような結果となってしまい、なにより応援下さった皆様、SUPER GTファンの皆様、最終戦でのチャンピオン争いをお見せることができず申し訳ございません。運だけではなく我々に足りないものを冷静に分析し、最終戦もてぎは性懲りもなく優勝だけを狙いたいと思います。このままでは終われません…。