2015 AUTOBACS SUPER GT ROUND 5
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
8月29日(予選)天候:曇り
コースコンディション:ドライ 観客数:26,000人
8月30日(決勝)天候:曇り時々雨
コースコンディション:ウェット&ドライ 観客数:34,000人
ノートラブルでベストなレースであったが、一歩届かず……。
全8戦で争われるスーパーGTは後半戦へ。シリーズ第5戦は44回もの長き歴史を誇る「鈴鹿1000km」として8月29〜30日に、鈴鹿サーキットで開催された。ここ数戦、決勝でのトラブルに泣かされ入賞を逃していた「Net Move GT‐R」はシーズン半ばに達したところで、シリーズ最大の過酷なレースに挑むことになる。
1000kmレースという、時間にして6時間近くもの長丁場をトラブル無く戦うことは、楽でないのは覚悟の上。だが、このレースでは、天候の激変も起こりやすく、またアクシデントも起こりがち。何が起ころうともおかしくないだけに、最後まで諦めることなく走り続ければ、きっと結果も伴うはず。Cドライバーの登録も許されるなか、小泉選手と岩崎選手の2名体制でレースに臨むこととなった。
公式練習 8月29日(土)9:20〜10:55
例年、「鈴鹿1000km」と言えば、残暑厳しき中でのレースという印象が強いが、今年はむしろ過ごしやすいぐらいで、実際走り始めとなる公式練習では気温が24度、路面温度は25度からのスタートに。特に路面温度は30度から40度あたりが予想されていただけに、タイヤのチョイスが非常に難しくなってしまった。最初に「Net Move GT‐R」のステアリングを握った小泉選手は、コースオープンと同時に走行を開始。最大限にタイヤのグリップを出すためにダンパーのセットを重点的に周回を重ねる。
ある程度セットが取れた段階で、まずは2分1秒420をマークした小泉選手。その後、周回を重ね2分01秒181をマークし、サーキットサファリのタイミングで岩崎選手にバトンタッチ。サファリのバスが走る中、最後まで走行して2分02秒565を岩崎選手はマークする。午前の公式練習は小泉選手がマークした2分01秒181がベストとなり、クラス15番手に入り、午後のQ1突破の13番手以内に期待できる結果となった。
公式予選 Q1 14:30〜14:45
今回の予選Q1も小泉選手が担当。気温は27度、路面温度は32度。チョイスしたタイヤにとっても良い方向。午前中の公式練習順位としては中団に属した事から、Q1突破への期待を背負い小泉選手がコースイン。アウトラップと1周をウォームアップに充てた後、小泉選手は「Net Move GT‐R」をアタックさせることに。
1周を無難に攻めた小泉選手は、まずは2分01秒212をマークしQ1突破圏内に浮上! だが、他のマシンはまだアタックを終了しておらず、順位のドロップがありえる為、チェッカーまでアタックを繰り返す。再度クールダウンののち最後の1本を全開でアタック。ベストタイムを刻みながらタイム更新するかと思われた矢先、デグナー2個目で痛恨のオーバーラン。無情にもこの周でチェッカー。計測2周目に出した2分01秒212が公式記録となり22番手となる。
小泉洋史選手
「今回も予選を任せて頂きました。フリー走行から少しでも速い車、加えて今回は1000キロの長丁場でもあるため、ロングの確認・リヤに優しい車作りを意識して行ないました。
予選セット・ロングセットと方向性が見えた事もあり、フリー走行時ラストに2分1秒181の15番手タイムをマーク出来ました。改善点もあった事から「Q1突破」は可能性高く、期待が持って予選へ挑みました。コースインして入念に且つ慎重にタイヤを温め、計測2周目にアタックをして2分1秒212。アタック1周目では悪くないタイムであり、正直これはいけると思いました
続けてアタックした3周目、違和感を感じました。車が曲がらない、リヤが重い…
セクター1・2はベスト更新したものの、セクター3・4で落ち、タイム更新は出来ませんでした。結果22番手。何故上記のような状況になったのか…。フリー走行朝方まで降っていた雨なのか?走行毎出来上がっていく路面なのか?はたまたリヤが勝ってしまうNEWタイヤのせいなのか?予選に向けて車も自分もアジャストしていったつもりが、想定以上の路面の出来上がりが早かったようでした。そこまで読み切れなかった私の判断ミスの結果です。気持ちを切り替え、1000kmという長丁場のレースを走りきりたいと思います。」
金曽裕人監督
決勝を見据えたセットとしては良い方向であったが、燃料が軽くNEWタイヤを履いた状態の予選には、それ専用のセット必要であったと思われる。明日の決勝は長丁場の1000kmであり、何が起こってもおかしくないサバイバル戦になるであろう。決勝セットは自信あり。我々は、まずはマシントラブルが出ないようにこの後、入念なメンテナンスを行い確実に、着実に明日のレースができるように万全の状況をドライバーに与えたい。ただ決勝が雨の予報となっており、GT‐R GT3には厳しい展開が予想されるが、しっかりと生き残ってポイントを獲りに行きたい。
決勝日・ウォームアップ走行 8月30日(日)11:08〜11:28
今回は普段のように、早朝に30分間のフリー走行が行われず、スタート進行の開始と併せ、20分間のウォームアップ走行が設けられていた。外れてほしかった天気予報は的中し、雨が降り出して路面は黒く染められる中「Net Move GT‐R」はこのレースウイークに初めて使用するハードのウェットタイヤを装着してコースイン。しかも、このレインタイヤはヨコハマタイヤの新作であり、パフォーマンス確認は今回が初めてであり全てが手探りという状況。徐々に雨足が強くなっていく中、小泉選手が最初にマークした2分15秒662が19番手。その後、一度ピットに戻ってミディアムのウェットタイヤを装着してコースインしたところでチェッカーが振られることに。確認の時間も短く、レインタイヤの正確な判断が付かないまま決勝を迎えることになった。
決勝レース(173周)12:30〜
今回もフォーメーションラップの前に、三重県警の白バイ、パトカーによるパレードランが行われた。マシンがグリッドに並び、置かれる間に雨は止みかけて、ドライタイヤに交換か、と思わせたが、結局は全車がウェットタイヤでスタートを切ることとなった。スタートを担当した小泉選手は、グリーンシグナルの点灯と同時にスタートを切り「Net Move GT‐R」をクリーンにオープニングラップをこなす。その後、チョイスしたハードのレインタイヤが、極端にタイヤ内圧を下げすぎた事から予想以上にパフォーマンスを出し切れない状態となっていた。その後も苦戦は続き、打つ手なく順位を下げ25番手で、1時間経過直後の32周目に岩崎選手と交代する。
そして、全車が最初のドライバー交代を終えた35周目からは「Net Move GT‐R」は着実にポジションアップ。波に乗る岩崎選手は、コースに日が射すようになり路面状態が回復の兆しを見せると、更にペースアップ。2回目のドライバー交代を行いドライタイヤを履くような状況まで引っ張ることに。それから間もなくセーフティカーが入ったことにより、ポジションは守られ、更に離されていた前とのギャップも埋めることに成功。61周目のピットレーンオープンと同時に小泉選手への交代が行われ23番手までポジションを取り戻すことができた。
小泉選手はハーフウエットの難しい路面の中走行を続けていたところ、1コーナーにオイルが激しく撒かれたことからスピンが続出した為、2回目のセーフティーカーが入ることに。オイル処理も終わり、SCランが終わった直後「Net Move GT‐R」と前のマシンとの差も更に縮まり、これで小泉選手も着実にポジションアップを狙えることに。着実に周回が重ねられる一方で、ライバルチームにもペナルティがいくつかあり波に乗る小泉選手は、やがて20番手を走るように。ロングランが可能であったことから、岩崎選手への交代を98周目まで引き延ばしたことで、17番手にポジションアップ。
岩崎選手がコースに戻った時のポジションは19番手。チョイスしたドライタイヤでのバランスは良く、岩崎選手は危なげないドライビングを見せ、1時間のスティントの間に16番手までポジションアップを果たす。入賞圏内の10位を考えれば、更にポジションアップを狙いたいところ。前を行く15番手は同じGT‐R GT3。ほとんどペースが同じであり、抜きどころが無く、それ以上のポジションアップは厳しいと判断したチームは129周目に小泉選手へと交代しラストスティントに挑む。給油時間をギリギリまで削り、ピット作業時間を縮めポジションアップを狙った結果、一気に3台抜きの13番手に浮上。その後、1台でも前でチェッカーを受けたく小泉選手はプッシュし続ける。二度のSCランが入ったことで全体のアベレージが下がっていたことにより、規定時間でのレース終了が濃厚となった頃、上空からポツリポツリと雨が降り出してくる!
これはまさに「Net Move GT‐R」にとってはチャンス。13番手から雨でペースの落ちたヨコハマタイヤ以外のマシンにどんどん追いつく展開に。残り5周、雨の中スリックタイヤでプッシュし続けた小泉選手は前を走る11位、12位のマシンが見えるなかで一歩届かなかったが、闘争心が伝わるドライビングは見事であった。本来予定されていた周回数であったら、そのタイム差から確実に入賞圏内10番手は見えるレース展開であった。入賞はできず13位、149周でのフィニッシュとなってしまったが、このレース展開はベストレースの一つであることは間違いない。次回のレースは、スポーツランドSUGOが舞台となる。GT‐R GT3勢が得意とするSUGOでのレースに期待を抱かずにはいられない。
小泉洋史選手
「今回からヨコハマタイヤがNEWバージョンのレインタイヤを投入。ウォームアップで走った感じでは大変フィーリングが良く『これは雨でも全然いけるぞ』と手ごたえを感じていました。レースは予報通りの雨でスタート。ウォームアップの感じからドライバー交代時には15番手くらいで繋ごうと考えていました。ところが周回を重ねる度に順位を落とす結果に。走行中『ドライに振り過ぎたかな?』『いやウォームアップのフィーリングと違い過ぎるぞ』とにかくフロントはアンダー、スロットルを開ければオーバーと何も出来ない状態でした。後から想定内圧に全く達していなかった事を聞き、原因がはっきりした事でほっとしましたが1スティント目のドロップが非常に痛かった。私の2スティント目では予定通りドライのスリックタイヤでのになりました。
ドライでの車のフィーリングは大変良く、エンジニアと直前まで話し合った事が活きていると感じながら走れました。私の3スティント目、ラストスティントが来ました。ここまでの車のフィーリング、変化している路面状況、エンジニアからのアドバイス、全て頭の中でおさらいし、目一杯で走ろうと決めていました。ドライバー交代を済ませピットロードに出ると真後ろに同じGT‐R GT3の3号車がいました。NEWタイヤでのアウトラップでしたが細心の注意を払い、目一杯で行きました。計測1周目から大変フィーリングが良く、3号車を引き離す事が出来ました。その後は前の車両は抜き、後ろから来る車両には抜かれないようにだけを考えて走りました。大きなトラブルやミスもなく、結果は13番手でした。16番手辺りを走っていたのに何故13番手ゴール?走行後エンジニアに確認をすると最後のピット作業で3台を抜いたとの事でした。予選順位も悪く決勝もポイントを取る事は出来ませんでしたが、今回のレースは間違いなく私のベストレースの一つです。ドライバーだけでもエンジニアだけでもなく、ピット作業で順位を上げる
正にチーム一丸となってのレースでした。」
岩崎祐貴選手
雨が降っている時のタイヤの使い方が良ければ、入賞できたかも知れません。僕のスティントはWETからDRY、DRYと全てのシチュエーションがありました。その中でもWET性能は非常に辛かった。その反面DRYでのパフォーマンスは高かったです。昨日、決勝セットを徹底的にチームの皆と煮詰めた結果であり、乗りやすく気持ちよく攻めることができた。あとはピット作業で順位を毎回上げてくれたことと、マシンが全くトラブルなく1000kmレースを走り切ったことに感謝してます。いつも入賞目前でチェッカーとなってますが、次のSUGOは僕も、GT‐R GT3も得意のコース。更にライバル勢はウエイトが効いてくるはずなので、再びチーム全員で目いっぱい戦いたいと思います。
金曽裕人監督
ヨコハマタイヤ装着のGT‐R GT3勢TOPでのチェッカーは素晴らしいと思います。それが入賞圏内ならなお更でしたが・・・。まだまだ足りない、まだまだ前進あるのみ。確実にパフォーマンスは上がっており、階段を一段一段上がっていってることは間違いない。特にチーム全体のパフォーマンスが上がっていることが何より嬉しい。最後のスティントのピット作業は、本当に見事だった。背伸びせず、この姿勢で次のSUGOも挑みたい。歩みは遅くても確実な進歩こそ「Net Move GT‐R」の実力となりますので。