2015 AUTOBACS SUPER GT ROUND 3

 

開催地:チャン・インターナショナルサーキット(タイ・ブリラム)/4.554km

620日(予選)天候:晴れ 

コースコンディション:ドライ 観客数:16,412

621(決勝)天候:晴れ 

コースコンディション:ドライ 観客数:38,381

 

灼熱の国ゆえに、抱えてしまったトラブル。それでも貴重な2ポイントを獲得 

開幕戦で優勝を飾り、第2戦を4位でゴールした後、「TOYOTA PRIUS apr GT」は船に積まれて海を渡ることに。年に一度の海外戦に挑むため、というのは今さら強調する必要もないだろう。ただし、その舞台は長らく続いたマレーシアから、昨年よりタイに改められている。首都バンコクから陸路を約6時間移動して到着する都市、ブリラムに設けられたチャン・インターナショナルは1周約4.5kmの、さながら直線をコーナーでつないだという印象の高速コースだ。何しろ、全長が富士スピードウェイとほとんど変わらないのに、ラップタイムはむしろ数秒短いのだから、どれほど高速か理解してもらえるだろう。

冒頭でも触れた好結果によって「TOYOTA PRIUS apr GT」を駆る、嵯峨宏紀選手と中山雄一選手はポイントリーダーとして第3戦に臨むこととなった。そのことは、最も厳しいウエイトハンデを背負っていると言い換えることもでき、早くも56kgに到達。加えて南国ならではの酷暑が楽な戦いを許してくれまいが、どれだけ高得点を獲得できるか注目された。

公式練習 620日(土)10:0011:35

前回のレースでは終盤にブレーキが音を上げてしまい、無念の4位となったものの、一時はトップを走行した「TOYOTA PRIUS apr GT」。ウエイトハンデはすでに厳しくなっているとはいえ、高速コースとの相性も悪くないことが確認されているだけに、引き続きの入賞に期待がかかった。走り出しとなる土曜日午前中の公式練習は、開始時でもう気温は32℃、路面温度も45℃と過酷な条件に。最初にステアリングを握った嵯峨選手は、まずピットアウト〜ピットインを繰り返して、入念にセットアップを進めていく。

持ち込みのセットがコンディションにマッチしていたこともあり、40分経過から間もなく、いよいよ連続周回をこなしていくことに。そして、その時点でのトップタイムとなる1分34797をマークした後、いったんピットに戻って微調整を行い、再度連続走行して残りの約30分を中山選手に託すこととなった。

中山選手にとって初めて走るコースだけに、何より重要なのはマイレージを増やすこと。嵯峨選手が順調にセットアップを進めていたこともあって、一度もピットに戻ることなく18周も走り込み、36167をマーク。この間にタイムアップを果たした車両もあったため、順位としては6番手ながらトラブルに見舞われることなく、また中山選手がコースをマスターできたという意味において、非常に有意義なセッションとなっていた。

公式予選 Q1 620日(土)15:0015:15

今回の予選Q1担当は嵯峨選手。それまでの好調ぶりを示すかのように、計測開始と同時に「TOYOTA PRIUS apr GT」をコースへと進めていく。気温は公式練習に比べ、4度上がった36度ながら、路面温度は一気に13℃も上がり58℃に! 温度の上昇によるコンディションチェックを2周に渡って入念に行なった後、いよいよアタックにかかる。コースを激しく攻め立てた嵯峨選手は、1分34700を記録してトップに浮上。もう1周アタックするも、ここでのタイムアップは果たせず35111に。納得の走りができたこともあり、嵯峨選手はチェッカーを待たずにピットに戻るが、それとほぼ同時タイミングで1台にのみ逆転を許す。それでもQ1を2番手で難なくクリアし、バトンをQ2担当の中山選手に託すこととなった。

公式予選 Q2 620日(土)15:4515:57

Q2では中山選手が先頭でコースイン。嵯峨選手のアドバイスに従い、2周をウォームアップとチェックに充てた後、最初のアタックで1分34856をマークする。しかし、気温は変わらないにもかかわらず、路面温度がさらに4℃上がっていたことも影響し、納得はいかなかったのだろう。1周クールダウンを挟んで、最後アタックをかけることに。しかし、短縮は果たせたものの34710とわずかに留まり、またトップはより厳しくなった条件下においても33秒台に突入していたため、順位はダウン。それでも、十分「狙える」5番手から、「TOYOTA PRIUS apr GT」は決勝レースに挑むこととなった。

嵯峨宏紀選手

昨年は接触があって、ポイントが獲れなかったので、リベンジも期してのタイ大会だったのですが、自分の予選はいい仕事ができたと思います。昨年はイン側に縁石がなくて、走るたびダスティだったのが、縁石が設けられたことで走れば走るほど、路面ができていくようになりました。そういう状況の中で、ウエイトを積んでいる状態にも関わらず、持ち込みのセットも良く、バランスもよく取れていたこともあって、いい位置に行けたのではないでしょうか。このコースがプリウスに合っていることも確認できたので、決勝レースがより楽しみです。

中山雄一選手

初めて走るコースだったので、セットアップも順調に進んだこともあり、公式練習は残り30分を自由に走らせてもらいました。タイヤも中古で、結果的にはロングになったのですが、案外タイムが伸びなくて……。36秒の前半しか出せない感じでしたから、不通過になってはいけないと、Q1をお願いして嵯峨選手に行ってもらいました。実際、Q2を走ったら普通にタイムが上がって5番手。積んでいるウエイトを考えたら、我ながらよく走れた方かな、と思います。公式練習でどういうふうにタイヤが変化していくのがチェック出来たので、今回はより自信を持って走りたいと思います。

金曽裕人監督

マシンセットもハイブリッドもドライバーもタイヤも流れに乗っており、ウエイトを感じさせない仕上がりで予選に挑むことができた。予選結果5番手は素直に嬉しいのですが、これは単独走行によるタイム。この高速サーキットでの決勝は間違いなくストレートの速いGT3勢に飲み込まれ苦戦すると思う。作戦でリカバリー出来る範囲を超えているが 明日は1ポイントでも多く獲り、シリーズTOPの座を守りたいと思います。

決勝日・フリー走行 621日(日)9:5010:20

このレースウィークで、何より懸念されたのが降雨だった。連日いつ降ってもおかしくないと言われながら、公式スケジュールの開始から一度も降らず。ただ、降り始めれば一気にスコールとなるというコンディションを変化させる可能性はあった。ただし、日曜日早朝のフリー走行を行う頃、そんなムードは微塵にもなく……。

フリー走行も、最初に「TOYOTA PRIUS apr GT」を走らせたのは嵯峨選手。スタートから9周連続で走行し、コンスタントに1分35秒台を記し続けた嵯峨選手のベストタイムは35247。最後にイン〜アウトを行って最終の確認を済ませると、残る8分間は中山選手が最後まで走行することに。その後に行われたサーキットサファリも、ピットに戻ることなく走り続けた中山選手が、セッション3番手で走行を終え、コースの隅々まで熟知出来たのは間違いないだろう。

決勝レース(66周)15:00

今回もスタート進行の開始とともに行われる、8分間のウォームアップ走行では、スタート担当の嵯峨選手によるイン〜アウトのみ。いかに順調にセットアップが進んだかが、そのあたりでもはっきり見受けられた。全車がグリッドに並んで、改めてグランドスタンドを見れば、今年も超満員!

フリー走行同様、広いサーキット上空には雲は浮かんでいても、雨が降り出すような気配は一切なし。気温は34℃、路面温度は45℃、公式練習時とほぼ変わらぬ温度の中、いよいよ決勝のスタートが切られることに。まずはポジションキープの5番手から「TOYOTA PRIUS apr GT」の嵯峨選手はレースを開始。早々と上位の3台が逃げる格好となった一方で、4番手争いも序盤から激化。4周目に1台の先行を許しはしたが、しっかりとグループの中で嵯峨選手はバトルを重ねていく。ただし、前後はいずれもストレートパフォーマンスに優れるFIA-GT3。コーナーで差を詰めても、抜ききるまでには至らず、そればかりかストレートで差を広げられてしまう。

そこで早めのドライバーチェンジを敢行。26周目にはピットに戻り、嵯峨選手は中山選手と交代する。しかし、どうにも様子がおかしい。想定どおりの時間で給油を行い、「TOYOTA PRIUS apr GT」を再びコースに送り出すが、十分に燃料が入っていないことが発覚! 原因は高熱に晒され続けたことで、燃料タンクの中の空気が膨張して、想像以上の圧がかかってしまっていたためだ。嵯峨選手が4番手を争っていた車両から大きく遅れることなく、レースを折り返したものの、いずれガス欠症状に見舞われてしまう……。

そこでやむなく34周目に中山選手を再びピットに呼び寄せ、給油を改めて行うことに。この間に17番手まで後退する。通常ならば、もう観念すべきところだが、誰より中山選手が諦めてはいなかった。そこから先、見応え十分なオーバーテイクショーを披露し続け、49周目には12番手に浮上。だが、あと一歩がなかなか届かない。

しかし、「TOYOTA PRIUS apr GT」以上に、ライバルはもっと厳しかったようだ。残り4周となる57周目に1台を、58周目にもう1台をパス。さらに最終ラップを目前とする59周目には、ワイルドカードで出場した地元チームの車両がピットに滑り込んで来たではないか! その結果、ゴール間際に執念が実り、9位でのフィニッシュを果たすことに成功する。ここで得られた2ポイントが、最後に重要な意味を持つことを期待したい。次回のレースは、再び舞台を富士スピードウェイに戻す。ウエイトハンデは60kgにまで達するとはいえ、間違いなくこの2戦のリベンジを果たしてくれるはずだ。

嵯峨宏紀選手

僕のスティントでは前後をFIA-GT3に囲まれてしまい、ストレートスピードの違いから毎ラップ閉められるような状況が続き、どうにも手が出なくなっていたので、あらかじめ決めていた作戦のひとつ、ショート〜ロングで行くことにして、その判断は悪くなかったと思います。ただ、不運だったのは給油中にトラブルが起きてしまって、ガソリンが半分ぐらいしか入らない状態になって……。ただ、後半に中山選手が頑張ってくれて、何とかノーポイントだけは回避することができました。今回のトラブルは今までにないことで、さすがタイとは思いました。順調にいっても表彰台は遠く6位が精いっぱいだったと思うなか今回は9位でも次回のレースをしっかり戦えば良いと思います。

中山雄一選手

ピットを出て行って、嵯峨選手が争った集団に出会ったのですが、その前には出られなかったな、と思ってしばらくしたら、無線でもう一度ピットに入ってくれと。作業中に何かあったようには見えたのですが、ジャッキが下りたので僕はスタートしたんですけどね……。それで17番手に落ちてしまい、僕としては決してペースも良くなかったと思っていますが、その後の展開に恵まれてポイント圏内にまで追い上げられたのは良かったと思います。ただ、不幸中の幸いとはいえ、すべてうまくいっても5位とか6位だったと思うので、僕自身の走りも精度を上げていかなければ、と思いました。

金曽裕人監督

5位以上が目標であっただけに今回の給油トラブルは余計であった。ドライバーもハイブリッドもタイヤも現在の与えられた環境の中で精一杯のパフォーマンスを見せてくれただけに非常に悔しい。現在の給油システムもガソリンタンクシステムも過去10年以上トラブルは発生しておらず、今回いかに灼熱条件でマシンに厳しかったかが実証された。トラブルを未然に防げなかったにしても我々のスキルがもっと高ければ2度のピットインは避けられたかも知れない。その状況下で大きく順位をドロップしても、あきらめず1ポイントを獲りに行ったドライバー両名の姿勢は素晴らしかった。今後5戦は、我々が万全の体制でドライバー両名を完璧にサポート出来る様にTEAM内の改善を宣言します。更に強いTEAMになりますので、ご期待ください。