2014 AUTOBACS SUPER GT ROUND6 鈴鹿サーキット
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
8月30日(予選)天候:晴れ
コースコンディション:ドライ 観客数:25,000人
8月31日(決勝)天候:晴れ
コースコンディション:ドライ 観客数:36,000人
伝統の一戦、鈴鹿1000kmを力強く走り抜き、2位入賞を果たす!
スーパーGTはいよいよ終盤に突入、残すは3戦となった。そのシリーズ第6戦の名称は「第43回インターナショナルSUZUKA 1000km」で、一時中断された時期もあったが、1966年にスタートした、長い歴史を誇るレースである。何度かスタイルを改めてきたが、2006年からはスーパーGTの一戦に。シリーズそのものが年々スピードアップしているが、そのことは1000kmにも及ぶ今回のレースでも例外ではないだけに、過酷さでは国内レース随一となっている。
シリーズ序盤は苦戦が続いた「OGT Panasonic PRIUS」ながら、7月30〜31日に鈴鹿サーキットで行われたタイヤテストに参加し、多くのデータを稼いだことによってバランスは飛躍的に向上。前回の富士スピードウェイでのレースでは、予選2番手を得ることとなった。残念ながら決勝では悪天候に翻弄されてしまったものの、それでもしぶとく新田守男選手と嵯峨宏紀選手は走り続けて、6位入賞を果たしている。今回は長丁場のレースとあって第3ドライバーに、1年ぶりの参加となる中山雄一選手を起用。先のテストにも参加していたこともあり、以前に増して強力な戦力となることが期待された。
公式練習 8月30日(土)9:40〜11:30
例年なら走り始めから猛烈な暑さとの戦いとなる「鈴鹿1000km」ながら、今年は1週間遅い開催ということも影響したのか、こと公式練習に関しては、ほどほどの暑さに。もっとも、このところの気候を思えば、いつ牙を向くか分からないし、また突然の降雨というのもあり得る事態。まずは空を仰ぎ見上げながらの走行開始となった。
前回に引き続き、「OGT Panasonic PRIUS」に一番で乗り込んだのは嵯峨選手。開始と同時にイン〜アウトを行い、最初のセットアップの後、本格的に走行を開始するが、2分2秒276をいきなり記録した直後にコースアウトした車両があり、赤旗中断に。そこで予定を改め、再開後には中山選手をコースに送り込み、計測は1周のみながら2分3秒992をマークする。
その後は新田選手が走行。予選セットで2分1秒889を記録すると、そこからは決勝セットにスイッチ。ロングランも順調に行えてからはイン〜アウトを繰り返し、よりセットを詰めていった。そして、ラストのGT300単独セッションを含む、15分間は再び嵯峨選手がドライブし、最終チェックも完璧に済ませて走行を終えた。
公式予選 Q1 14:00〜14:29
日差しは午前中の公式練習の頃と大きな変化はなかったが、公式予選が行われる頃には陽が高く上がったこともあって、気温は4度上がって30度に、そして路面温度は10度も上がって40度にも達していた。ようやく鈴鹿1000kmらしくなってきたが、それでも早めのアタックは禁物と、長いコースでもアウトラップともう1周で、Q1担当の嵯峨選手はしっかりとコンディションを整える。
そしてアタックを開始。まず2分0秒890を記し、Q1突破は間違いないものの、乗りに乗る嵯峨選手はさらにコースを激しく攻め立て、2分0秒452にまで短縮を果たす。その直後にS字でスピンアウトする車両があり、赤旗によって計測は中断。残り7分間で再開されるも上位5台はピットでステイ、その中には「OGT Panasonic PRIUS」が含まれていたのは言うまでもない。4番手で難なくQ2進出を果たすこととなった。
公式予選 Q2 14:49〜15:07
予定では14時40分からスタートのQ2だが、GT300だけでなく、その後のGT500のQ1でも赤旗が出たことから、約10分遅れで開始されることとなった。今回も嵯峨選手から的確なインフォメーションを伝えられていた新田選手は、より積極果敢にコースを攻めていった結果、なんと1分59秒955をマークすることに成功。レコードタイムを更新するも、前後して同じJAF GT勢のCR-Z GTも相次いで2分を切ったこともあり、まずは3番手につけることとなる。
本来なら、この後もう1周アタックする予定だったものの、またしてもダンロップコーナーでのスピンアウトがあり、赤旗が出されてしまう。再開後の計測時間は、わずか4分のみ。チャンスは1周のみだが、これに新田選手は賭けた。わずか3台だけの走行で、完璧なクリアラップがとれた中、1分59秒687へと短縮を果たしたものの、順位を上げることはコンマ3秒だけ及ばず、そのままの順位に留まった。それでも3番手という好位置からスタートできるのは、長丁場のレースとはいえ、「OGT Panasonic PRIUS」にとって作戦の幅が広がることと意味している。連続入賞、いや今季初の表彰台獲得に、期待は大いに高まることとなった。
新田守男選手
「クルマの感触はすごくいいので、明日はいいレースができるんじゃないでしょうか。あとは僕と宏紀と雄一とで、ミスなく走ればいいポジションに行けると思うので、しっかり力を合わせて表彰台に立ちたいですね。途中、赤旗が出たのは、まだアタックしている最中だったので、ちょっともったいなかったかな。再開されてもう一度行ったけど、グリップは落ちていたんでね……。とはいえ、トップだけは見えませんでした。あわよくば2番手を、と思っていましたが、まぁ仕方ないです。」
嵯峨宏紀選手
「今回は距離の長いレースなので、予選はそんなに重要ではなかったから、タイヤを極力温存する予定でした。13番手以内の、Q1通過するタイムが出たら、すぐやめようと。実際早めに切り上げたのですが、もうちょっと行けたかもしれませんし、もっとタイム的にも良かったかもしれません。それでも4番手で、悪いタイムではありませんでしたし。事前にタイヤテストを行った時の感触では、決勝でもペースは悪くないでしょうから、この位置からトラブルを起こさず、無難に走ることができれば、いいところでフィニッシュできると思います。」
中山雄一選手
「1年ぶりのGTですが、クルマはコントロール性が上がっていて、リヤが出た時にもスピンしそうになったりすることはほとんどなかったので、安心して走ることができそうです。レースは3番目に乗る予定ですが、きっといい順位で戻ってきてくれると思うので、ちょっとプレッシャーもかかりそうです(笑)。僕の仕事はしっかりロスなく、次につなぐことだと思いますので、それをしっかりやってきたいと思います。」
金曽裕人監督
「完璧な流れです。嵯峨選手のQ1もパーフェクト、新田選手のQ2もパーフェクト。これ以上ない予選でGT300クラスでの2分切りも果たしました。この流れのまま、予選3番手から優勝を狙いたいので、我々はメカニカルトラブルを出さない完璧なメンテナンスに努めたいと思います。」
決勝日・フリー走行 8月31日(日)8:30〜9:00
決勝当日も、早朝は拍子抜けするほどのコンディションに・・・・というのが、最も相応しい表現だろう。朝のフリー走行は気温24度、路面温度も26度と、鈴鹿1000kmらしくない暑さで、しかも上空には薄い雲すら浮かんでいたほど。もっとも、タイヤの想定温度域を外すまでには至らなかったから、走行に大きな影響を及ぼすことはないだろう。
最初に「OGT Panasonic PRIUS」のステアリングは新田選手が握り、2分3秒613を記録した後に、中山選手にバトンタッチする。そのままチェッカーまで走り続ける中、2分3秒323をマークしたのは、完璧にマシンを理解したことの証。続いて行われたサーキットサファリを嵯峨選手が走行し、最終チェックを完了することとなった。
決勝レース(173周)12:15〜
昨年は途中セーフティカーランもあり、決勝タイムは6時間をわずかに切るに留まったが、今年は特にGT500のラップタイム向上が著しいことから、決勝タイムも短縮されるのはもはや確実。それに応じた周回をGT300も重ねなくてはならないから、レースはより難しさを増したと言えるだろう。
決勝レースのスタート進行の開始を告げる8分間のウォームアップでは、スタート担当の新田選手が1周のみ走行してコンディションチェックが行われた。この頃の気温は27度で、路面温度は31度。余談ながら昨年は34度、47度だっただけに、いかに例年より穏やかだったか分かろうというもの。三重県警の強力による白バイ、パトカーの先導によるパレードランが1周行われた後、改めてフォーメイションラップが行われ、グリーンシグナルの点灯ととともに全車がアクセルを全開にしていく。
予選同様、3番手で1コーナーに飛び込んでいった「OGT Panasonic PRIUS」は、その後しばらくポジションをキープする。やがて先行する「MUGEN CR-Z GT」のペースが鈍り始めたことから急接近するが、固いガードに阻まれているうちに近づいてきたのが「TWS LM corsa BMW Z4」だった。特に「TWS LM corsa BMW Z4」とは26周目から2周に渡って激しいバトルを繰り広げた後、逆転を許す。だが、これで闘志に火が着いた新田選手は、29周目に「MUGEN CR-Z GT」を抜いて、3番手に返り咲く。そして、1時間を経過して間もなくの30周目に、嵯峨選手へとシートを委ねる。
ピットでやや時間を要してしまったため、一つ順位を落としてしまった嵯峨選手ながら、42周目に「SUBARU BRZ R&D SPORT」を抜いて3番手に復帰。そのままポジションをキープしながら、62周目に中山選手と交代。背後に「Studie BMW Z4」を常に置きながら周回を重ねるも、プレッシャーに少しも屈しなかったばかりか、スティント後半には引き離すことにも成功。95周目からは再び新田選手が走行する。すでに3時間を悠に経過しているものの、レースは特に荒れることなく、それがかえって不気味さを醸し出していたのだが・・・・。
それも単なる希有に終わったかと思われたものの、実はこの頃からブレーキに不調が生じ、フルブレーキングが困難な状態になっていた。それを後続に感じさせなかったのは見事ではあったが。そうして、4時間32分を経過した128周目に、再び嵯峨選手が「OGT Panasonic PRIUS」をドライブ。どうやらそのままチェッカーまで疾走することになりそうだ。しかしながら、ブレーキ不調は周回を重ねるごと顕著になっていき、さらにスムーズにシフトダウンも出来なくなっていく。
そんな中、先に音を上げたのは2番手を行く「ARTA CR-Z GT」の方だった。突然の失速によってピットイン。147周目のストレートで嵯峨選手は2番手に浮上! トップの「TWS LM corsa BMW Z4」は遥か彼方だったが、その時点で想定される残り周回は10周あまり。そのまま逃げ切ることを、ピットで誰もが祈っていたもの。
ところが、一瞬肝を冷やす光景も。153周目のシケインで嵯峨選手がオーバーラン、ショートカットするシーンがモニターに映し出されたからだ。これでようやく周囲も完全な状態ではないことに気づいたものの、嵯峨選手は残る力のすべてを絞り出し、迫ろうとした「Studie BMW Z4」を振り切ることに成功。159周もの長きを、5時間40分をきって走るというスプリントさながらの戦いにおいて、今季最上位となる2位を「OGT Panasonic PRIUS」は獲得することとなった。
次回のレースは今年初めて日本を離れ、初開催となるタイ、ブリラムサーキットが舞台になる。スーパーGTがこけら落としとなるサーキットだけに、データは皆無。すべて未知の戦いとなる上に、熱帯に位置するタイは1年を通じ適温がほぼ一定であるため、また暑いレースになりそうだ。しかし、未知ということはすべてに条件は一緒。これまでにない戦いが期待される。10月4〜5日にもまた、今回のように笑顔を見せて欲しいものだ。
新田守男選手
「思ったより気温が低かったり、そうかと思うと突然上がったりして、タイヤに対してのコンディション変化が厳しかったので、難しいレースでした。それでも、みんな比較的ミスなく周回が重ねられたのですが、トップのBMWの速さは圧巻だったのと、最後CR-Zにトラブルが出て、僕らにそういうのがなくて良かったなぁ、と思っています、棚ボタでラッキーというよりも。ペース的にはそう劣ってはいなかったのですが、ピットのたびに給油時間でちょっとずつ差がついてしまうような状況になっていたので、その点では課題を残してしまいましたね。ただ、みんな頑張ってくれて表彰台に上がれたので、残念でもありますけど2位で終えることができました。次は真夏のタイで、コースもどういう状態になっているか分かりませんけど、みんな同じ条件でしょうから、正直ここで勝てなかったので、なんとかタイで優勝したい。そういう意気込みでチームもドライバーも精進していきたいと思います。」
嵯峨宏紀選手
「第2スティントと最終スティントを担当して、第2スティントでは比較的クルマのバランスは良かったんです。でも、ちょっと路面温度が高くなっていたこともあって、思いのほか履いていたタイヤとのマッチングが良くなかったんですが、それでも2分4秒台で走り続けることができたので、差も詰まらず、開きもせずに淡々と行けました。ところが最終スティントではブレーキにトラブルを抱えていて油圧がかかり難くなり、加えてシフトダウンがうまく出来ないという症状が出ていたんです。かなり満身創痍な状態だったので、前を追うことはできず、後ろとのギャップを気にしつつ……という守りのレースになってしまいました。それでもCR-Zがトラブルで遅れて、本来3位だったレースが2位になったので、そういう部分では良かったんじゃないでしょうか。今回大きなポイントが獲れたので、まだまだ諦めずに頑張って、残りのレースもチャレンジしていきたいと思います。」
中山雄一選手
「今回、第3ドライバーとしてプリウスに乗って、表彰台に立つことができて本当に嬉しいです。今日の朝はほとんど僕に乗せてもらって、しっかりクルマに慣れることはできたのですが、それでもGTレースを走るのは1年ぶり。ライン以外はゴムで汚れているでしょうし、GT500の行かせ方など、始まる前までは不安だったんですが、走り出したらうまく対応できたので、自分ではいい仕事ができたと思っています。後ろからBMWが迫って来て、S字では詰められて、けっこう緊張していたんですが、ガソリンが減って軽くなってきてからは引き離せたので、最後は落ち着いてピットまで帰ってくることができました。けっこうカメラにも写ったそうなので、これがいいアピールになればいいな、と思います。」
金曽裕人監督
「まだ1コ上がありますので、マシンも100%ではないので、応援くださる皆様の為にも進化を遂げ攻め続けます。残り2戦とも表彰台。そして1番狙います。」