2013 AUTOBACS SUPER GT  ROUND5

開催地:鈴鹿サーキット/5.807km

817日(予選)天候:晴れ
コースコンディション:ドライ 観客数:26,500

818日(決勝)天候:晴れ

コースコンディション:ドライ 観客数:36,500

相次いだトラブルを乗り越えて、1000kmレースで完走を果たす

スーパーGT5戦は、鈴鹿サーキットを舞台に伝統の1000kmレース、「Pokka Sapporo 1000km」として開催された。シリーズ最長のレースは夏休みの最中とあって大観衆を集め、華やかなムードを持つことでも知られている。その一方で、戦いは極めて過酷。約6時間に及ぶレースのほとんどは猛暑の中とあって、ドライバーもマシンも激しく痛めつけるからだ。ただし、最後は夕闇迫る中でのチェッカーとなり、直後には花火も。そんなメリハリもつけるレースでもある。

長丁場のレースとあって、第3ドライバーの登録も許されており、「Panasonic apr PRIUS GT」をドライブする新田守男選手と嵯峨宏紀選手のパートナーとして起用されたのは、2013全日本F3選手権でチャンピオンを決めたばかりの中山雄一選手。昨年も同様に第3ドライバーとして適用されたが、序盤のうち発生したトラブルによりリタイアを喫してしまったこともあり、決勝レースでは乗れずじまい。1年後にまた巡ってきたチャンスを中山選手がどう生かすか、そして1年間でどれだけ成長を果たしたのか、大いにチームも注目していた。

さて、今回のレースを前にJAF GTには、また厳しい規制が。最低地上高を従来よりも8mm高めた53mmへの変更が命じられ、さらに給油装置には流量リストリクターの装着が義務づけられたのだ。逆にFIA GT3に対しては燃料タンクの容量を、車両公認書記載の容量とすることが許され、実質ほとんどの車両に対し、増量が許されたのである。いずれにせよ、「Panasonic apr PRIUS GT」にとっては、厳しいお達しとなったのは言うまでもない。

公式練習 817日(土)9:20

土曜日の午前中に行われた公式練習は、予想どおり厳しい暑さの中でのスタートとなった。セットアップを進めていく上では雨の心配がほとんどいらないのは何よりだが、むしろ少々なら降って温度を下げてほしいと思ってしまうほど。ともあれ、今回も「Panasonic apr PRIUS GT」のステアリングを握るのは新田選手。スタートと同時にコースへと駆け出していく。

まずチェックを行ってすぐにピットイン。最初の調整を行い、8分後にピットを離れるが、直後に赤旗が出されてしまう。再開後、すぐに走り始めた新田選手は2周後に24522をマーク。この段階では順調な滑り出しと見えた。そして、もう1周走ったところでピットイン。

今回から上げなければならなかった最低地上高に対する最適化として、フロントタイヤの大径化を筆頭に、その他にもいくつか投入された新アイテムのチェックを行うため、そして中山選手に少しでも慣れてもらうため、そこからは普段よりも多めの周回が重ねられるはずだった。ところが新田選手は、間もなくピットに戻って来たではないか!「バックストレートで5速に入れたら、それっきり……」と新田選手。ミッションの修理には予想以上の時間を要し、残り1時間以上ピットに留まったまま、無情にもチェッカーが。嵯峨選手と中山選手が1周もできず、不安を残すこととなった。

公式予選Q1 14:0014:15

今回、ノックアウト予選のQ1を担当したのは新田選手。公式練習はセッティングどころか、タイヤの選定もできぬうちに終えざるを得なかったため、過去のデータを照らし合わせての、いわば決め打ち状態となっていた。ピットが1コーナー寄りだったこともあり、「Panasonic apr PRIUS GT」は早めにコースイン。しっかりポジションを合わせて2周目からアタックを開始する。まずは4912をマークし、クールダウンを1周挟んで再びアタック。しかし、トップが1秒台に乗せる中、短縮を果たしたとはいえ、4268を記すのがやっとで、次の周にはもうタイヤのピークが……。

ハイレベルな現在のGT300においては、たかがコンマ3秒が、されどコンマ3秒となってしまい、Q1突破ならず。決勝レースには19番手から挑むこととなった。

新田守男選手

「朝の公式練習をほとんど走れず、ぶっつけ本番で予選をやるような感じになってしまい、いいところがまったくないまま予選を終えざるを得ませんでした。予選がこの順位になっちゃったのは仕方ないですけど、長いレースなので決勝に向けたセットがきっちり入れられれば、上位入賞も目指せると思うので、いろんなデータを組み合わせてレースには挑みたいと思います。明日のフリー走行で、どんどんセットを確かめつつ、少しでも雄一や宏紀にも乗ってもらって、最高の状態にできるよう頑張ります。」

嵯峨宏紀選手

「不運なことに公式練習でトラブルが起きてしまい、走行することができなかったんですが、明日に向けてチームにはしっかり対策をしてもらって。長いレースですから予選は芳しくなかったですが、最後まで諦めずに行って完走すれば、このレースではいいところにいられますからね。最低でも完走して、それに伴っていい結果がついてくるように、ドライバーとして全力を尽くします。」

中山雄一選手

「全然走れなかったので、明日の朝、少しでも走れればいいですね。決勝では1スティント、1時間ちょっと走ることになると思いますが、僕にとってそれだけの時間走り続けるのは初めての経験になります。どうなるか分かりませんが、楽しんでいきたいと思います。」

金曽裕人監督

「今回、出来る限りの部品交換やオーバーホールを行い挑みました。結果、そのオーバーホール部品の問題でミッションのトラブルを誘発してしまった。良かれと思うことも裏目に出てしまいドライバー3名、関係各位にはフラストレーションしか残らない1日となり申し訳ございません。幸いにも、1000kmレースであり予選順位は重要ではない。よって明日は仕切りなおして先ずはマシンのセットアップを完璧にしたいと思う。」

決勝日・フリー走行 818日(日)8:309:00

何たることか……。日曜日の早朝に行われたフリー走行でも、「Panasonic apr PRIUS GT」をトラブルが襲った。わずか2周走って、7495を記した後に昨夜、決勝用に交換したモーターが不調。幸い、メカニックたちの必死の作業によって終了直後には交換は完了。続けて行われたサファリで、わずか1周ではあったものの、中山選手は走行を許されることとなった。

トラブルシューティングはこれにて完了。決勝にはもう……と、ドライバー、スタッフ全員が祈るような気持ちであったのは言うまでもない。

決勝レース(173周)12:30

スタート進行の始まりは1120分。暑さはまさにピークにあって気温は34度、そして路面温度は50度にまで達していた。グランドスタンドのみならず、コースサイドも埋めた観客たちにとっても、長く厳しい戦いの始まりとなる。今回も「Panasonic apr PRIUS GT」のスタート担当は新田選手ながら、8分間のウォームアップには嵯峨選手が。これで3人のドライバー全員がようやく走行したことになる。

スタートからの1周で、ひとつ順位を落とした新田選手ながら、長丁場のレースであり、ましてやマシンは完全な状態ではない。無理は禁物との判断は、まさにベテランならでは。予想以上の路面温度がタイヤを痛めつけ、ライバルの多くが予定よりも早くドライバー交代を行う中、新田選手は33周目まで周回を重ね、6番手で嵯峨選手にバトンを託す。

だが、ピットを離れた直後にまたもアクシデントが発生。「Panasonic apr PRIUS GT」自慢のエアコンが機能しなくなってしまったのだ。18番手で復帰した嵯峨選手は、その後一台の後退により、ひとつ順位を上げるも、猛烈な暑さの中でマシンをコース上に留めるのがやっと。そんな中、2時間を超えて間もなく、バックストレートでタイヤがバーストした車両があり、パーツが散乱したこともあってセーフティカーがコースイン。合わせてピットに入り、61周目からは中山選手が走行を開始する。

エアコンの故障をPIT作業で修復したものの完全ではなく再度ピットに戻り修復したものの完璧では無い状況。中山選手の初GT決勝ドライブもまた、強烈な暑さとの戦いとなっていた。それでもコンスタントに周回を重ねた。ペナルティーも含め作戦外のピットインを余儀なくされたことで、完全に勝負権は失われたものの、何とか完走を、と我慢の走りを重ねるドライバーたち。92周目からは新田選手が再びコースに戻るが、トラブルが続く時には嫌というほど続くもの。今度はミラーにタイヤかすが当たり、後方視界が遮られてしまう。だが、諦めの悪さでは天下一の新田選手、そのまま走り続け119周目にコースアウトはしたものの、最後のスティントを嵯峨選手につなぐこととなった。

ところが、5時間を過ぎてなお、またもトラブルが発生。136周目に車両からの振動を訴え、嵯峨選手がピットに戻ってくる。コースオフした時にアンダーパネルが脱落しそれが振動の原因と判断し応急処置を施した。その後、諦めの悪さを新田選手から伝授された嵯峨選手は、手負い車両を何とかチェッカーを受けることに成功。141周を走り、15位での完走を果たすことになった。

これ以上ないほど苦しい戦いの中で得られたデータは、決して少なくない。続いて迎えるシリーズ第6戦は、富士スピードウェイが舞台。「Panasonic apr PRIUS GT」が初優勝を飾ったサーキットでの逆襲を、スタッフ全員が誓っていた。

新田守男選手

「今回はずっと、練習から予選、決勝まで、よくこんなにあるなぁ、という感じでトラブルが続きました。スタートしてすぐペースを上げられなくなったのはタイヤが厳しかったからで、それでもなんとルーティンのタイミングで代わったんですが、宏紀が出て行く時にはエアコンがおかしくなっていて。次に僕が出て行って10周ぐらい走ったところで、今度はミラーがなくなってしまったんですね。無線でGT500の来るタイミングを教えてもらおうと思ったんですが、それもうまくいかなくて。最後に宏紀が乗ってからもいろいろ起こったみたいですね。完走できて良かったけれど、もうちょっと普通にレースができないと……。確かにいちばん厳しい条件のレースではあったんですが、やることはもっとあるなぁ、というのを実感しました。」

嵯峨宏紀選手

「何から話していいのか分からないほど、いろんなことが起きました。最後は原因が分からないんですけど、振動がすごく出てしまって。最初のスティントでもエアコンが作動せず、猛烈な暑さとの戦いで最後の方は意識朦朧となり、タイヤの評価もできず、とりあえず走り切るだけのスティントとなってしまいました。ただ、全体的にタイヤがブロー傾向だったんで、非常に厳しい戦いになってしまい、他にトラブルが起こらなくても勝負権はなかったでしょうが、完走だけは絶対にしようと。残念というより、悔いの残る1000kmでしたが、これを起点として次に向け、また頑張るのみです。」

中山雄一選手

「タイヤはブリスターが出ていたほどギリギリの状態だったんですけど、それでもめちゃくちゃきついというわけではありませんでした。それより、GTの暑さというのを体験させてもらい、エアコンが壊れていたからとはいえ、こんな暑いとは思いもしませんでした。その点では辛かったんですが、いい勉強をさせてもらいました(苦笑)。今後、GTに乗れる機会があったら、熱対策をしっかりしなくちゃいけないことを覚えました。」

金曽裕人監督

「幾度のトラブルにも耐え無事に完走できたことを3名のドライバーに先ずは感謝したい。だが、我々のマシンは、全くのパフォーマンス不足であった。性能調整でJAF車両は車高も上がり、リストリクターも小さくなりJAF車両同士も平均化されるはずが、NAエンジンと市販部品で構成されるハイブリッドシステムには今回の性能調整は必要以上に影響している事も否めない。不利な条件であっても、この先のレースを我々は全力で戦わなければならない。必ずやこの状況を打開して見せますので後半戦にご期待ください。」