2013 AUTOBACS SUPER GT ROUND4
開催地:スポーツランドSUGO/3.704km
7月27日(予選)天候:霧
コースコンディション:ドライ 観客数:9,500人
7月28日(決勝)天候:晴れのち雨
コースコンディション:ドライ〜ウェット 観客数:26,500人
レース直前にトラブル発生……。我慢のレースでしっかりデータ蓄積を果たす。
海を渡ってのレースとなった、前回のマレーシアラウンドから1か月あまり。スーパーGTの第4戦が宮城県・スポーツランドSUGOで開催された。このコースは国内でも屈指のテクニカルレイアウトで知られ、しかもアップダウンの激しいことが何よりもの特徴。もともと旋回性能の高いJAF GTに有利とされ、昨年もFIA GT3が猛威を振るい続ける中、「Panasonic apr PRIUS GT」が初めてトップを走行した、相性のいいコースでもある。
新田守男選手と嵯峨宏紀選手がドライブする「Panasonic apr PRIUS GT」は、第2戦・富士ラウンドで歴史にも残る、ハイブリッド車両として初めてのスーパーGT優勝を遂げて、意気揚々とセパンラウンドに挑んだものの、わずか6周にしてエンジンのスロットル系にトラブルが発生し、無念のリタイアを喫してしまった。そのため、引き続き40kgのウエイトハンデを背負ってのレースとなるが、まだまだシリーズは中盤戦。また、JAF GTに対しては一律1ランク、リストリクター径の縮小が命じられたが、進化を重ねる自慢のハイブリッドシステムのアシストを持ってすれば、ここからの巻き返しは十分に可能である。SUGOでの大暴れに期待がかかったのは、もちろん言うまでもない。
公式練習 7月27日(土)8:45〜
スポーツランドSUGOのある東北地方は、未だ梅雨が明けていない。そのこともあってか、週末の天気予報は降水確率高めで、曇り時々雨と告げていた。どうあれ過酷な戦いとなることは覚悟の上。ちなみにピット設営やサポートレースの練習走行が行われた金曜日は強い雨に見舞われたり、やんでも霧がコースを包んだり、まさに予報どおりの天気となっていた。
案の定……と言うべきか、土曜日も朝から濃い霧がサーキットを包んでおり、予定どおりスケジュールが進んでいくのか危ぶまれたものの、雨には見舞われずに済んだことで、路面状態は徐々に向上していく。そして、8時45分からの公式練習が始まる頃には、やや霧も薄くなって予定どおりセッションがスタートすることとなった。
最初に「Panasonic apr PRIUS GT」をドライブしたのは新田選手。スタート時点ではまだ路面もところどころ濡れていたこともあり、用意されていたレインタイヤを試しつつ周回を重ね、やがてインターミディエイト(浅溝レイン)が履けるようになると、1分30秒台も見え始めるようになる。そして、折り返しの1時間を間もなくというところで嵯峨選手にスイッチ。ところが、それから2周後には、再び濃くなっていった霧が視界を遮るようになったため、赤旗が出されてセッションは中断される。だが、なんとか17分後には再開され、もうこの頃にはドライタイヤが使えるように。再び乗り込んだ新田選手は、3周後にその時点でのトップとなる22秒700をマークする。
そして、GT300単独のセッションに向けて、再び嵯峨選手がドライブ。だが、決勝重視のセットアップを進めるはずが、再び赤旗が。再開はされたものの、残り計測は5分とあって十分なチェックができずに終わる。なお、新田選手が自己ベストを記録した後、2台がこれを上回ったこともあり、3番手には留まりはしたが、予選に向けては確かな手応えを得ることになった。
公式予選Q1 14:00〜14:15
今回もノックアウト予選のQ1を担当したのは嵯峨選手。引き続き薄い霧がコースを覆っていたが、路面は完全に乾いており、もちろんのこと最初からドライタイヤが装着された。しかし、7月下旬にしては低めの温度が影響しているのか、タイヤはなかなか温まらず、さらに内圧も想定したどおりに上がって来ない。そのため、嵯峨選手が最初にアタックをかけたのは4周目。まずは21秒973を記して公式練習のタイムを上回り、さらにこの段階でもう、従来のレコードタイムを更新。しかしながら、ライバルはすでに20秒台に突入していたこともあって、このタイムに満足することなく嵯峨選手は1周のクールダウンの後、再びアタックをかけていく。
そして、21秒902。短縮は果たせたが、まだまだ。1周しっかりポジショニングに充てた後、最後の攻めは21秒717へ。4番手にはつけてQ1突破は果たしたものの、トップにはほぼ1秒の差をつけられているため、しっかり情報を嵯峨選手は新田選手に伝えて、さらなる順位の上昇に期待を込めることとなった。
公式予選Q2 14:40〜14:42
普段どおりQ2はQ1より計測時間が3分短いこともあり、そうそうウォームアップに時間を割くことは許されない。そこで新田選手には内圧を高めたタイヤを準備し、早めにアタックをかけられるように算段を整えた。これが功を奏し、3周目には21秒961をマークした新田選手は、勢いに乗って次の周には21秒186にまで短縮を果たす。
こうなると、もはや20秒台突入を目指すしかない。渾身の走りを見せた新田選手。だが、最後の計測ラインを駆け抜けた直後、タイミングモニターに記されたのは21秒003というタイムと4番手という結果……。それでも2列目グリッドからのスタートであれば、十分勝機あり。「Panasonic apr PRIUS GT」の今季2勝目が、より一層期待されることとなった。
新田守男選手
「タイヤとのマシンセットはちょっと合わせ切れませんでしたが、予選は比較的いい順位だったんで、まぁ良しということにします。もうちょっと前に行ければ、なお良かったと思うんですが、ヨコハマタイヤ勢としてはトップですし、他のメーカーを履くクルマがどんな状態のタイヤなのか分かりませんが、僕たちはレースではパフォーマンスが高いだろうと思っているタイヤを使っているので、希望を持って決勝を戦いたいと思っています。」
嵯峨宏紀選手
「雨上がりの予選だったんで、路面がかなり滑りやすくなっていたんですが、タイヤの内圧が思いのほか上がってこなくて。けっこう長いことラップして、最後の方でやっと、それも思ったよりも上がり切っていなかったんです。そこでインフォーメーションを新田さんの時に入れて、ちょっと内圧上げてQ2に行ってもらったら、それがうまく機能したという部分では良かったと思います。ただ、前の3台とはギャップもあるんで、決勝に向けて作戦も含め、立て直し方を考えようと思います。」
金曽監督
「PRIUSと菅生サーキットの相性が良い事とドライバー2名も得意とするサーキットでも有り、満足な予選結果でした。上位3台はTURBO車両であり一発出しBOOSTもあればタイヤメーカーの違いも有り0.5秒ほど届かなかったが、明日の決勝は焦らず後方から安定したLAPを重ね表彰台を狙って行きたいと思う。」
決勝日・フリー走行 7月28日(日)9:00〜9:30
土曜日の午後あたりから天気予報は錯綜しており、「日曜日も引き続きこんな天気」という情報もある一方で、「日曜日には回復するらしい」という情報も。実際のところといえば、早朝からコースの上空には薄い雲が浮かんではいるものの、その切れ間からは強い日差しも刺すようになっていた。フリー走行が行われる頃の路面は一部に濡れた個所も残していたが、限りなくドライというのが相応しい。もちろん、「Panasonic apr PRIUS GT」を駆る新田選手はドライタイヤを装着してコースイン。しっかり2周をコンディションチェックに充てた後、27秒台を連発した新田選手。ところが、その次の周の4コーナーで、前を走る車両がスピンしたからたまらない。間一髪、接触を免れた新田選手ではあったものの、2台はコース上で止まってしまったため、赤旗が出されてしまう。さらに再開後にも、新田選手はやはり4コーナーでスピン。やや濡れた路面も活用できないかチェックしようとしたのが裏目に出た格好だ。これで二度目の赤旗が。再開後には嵯峨選手がステアリングを握り、想定されたレースラップ、24秒台を続けてマークしたところでフリー走行は終了した。
決勝レース(81周)14:00〜
決勝レースのスタート進行が始まる頃ともなると、もう天気は晴れそのもの。スタンドをいっぱいに埋めた大観衆からすれば、絶好のレース観戦日和ということになるのだろう。中にはここまで温度が上がることを見越しておらず、混乱するチームも。その点で言えば、「Panasonic apr PRIUS GT」にとっては想定内。まさに絶好のコンディションとなるはずだったのだが……
しかし、直前に行われる8分間のウォームアップを「Panasonic apr PRIUS GT」は走行せず。それどころかピットではメカニックによる、懸命の修復が行われていた。クラッチのレリーズにトラブルが発生。暖気中には焼きついてしまったのだ。何とかスタートまでに……というドライバーの思い、そしてメカニックの努力も及ばず、ピットを離れられたのはスタートが切られてから2周後。
それでも、新田選手は諦めることなく必死に周回を重ね、一時はトップを争い合う車両に続いて走り、変わらぬペースでの周回も可能だったことで自信と、そして何より不可欠な今後に向けたデータを蓄積していく。そして、40周後に嵯峨選手へとバトンタッチ。それから10周もするとご機嫌を崩しつつあった空から雨も!
これが恵みの雨になる可能性もなくはない。われ先と、嵯峨選手はピットに飛び込んでタイヤをスイッチする。結果的に、その雨は強くなったり、弱くなったりを繰り返したものの、ヨコハマタイヤの性格的には十分ドライタイヤでも走行が可能だった。9周後には再びタイヤを改めるも、それはデータ蓄積のため。いずれ同じような、いやもっと過酷な状況が訪れた時、必ず臨機応変な対応が可能になるはずだ。
残された結果はトップから5周遅れの22位。だが、繰り返しとなるが今回得られた豊富なデータは確実に糧となる。次回のレースはシリーズ最大の難関であり、最長のレースとなる鈴鹿サーキットでの1000kmレース。ここに「Panasonic apr PRIUS GT」は全日本F3タイトルに王手をかけた、中山雄一選手を第3ドライバーとして起用することが決定。若い力も加えて、逆襲を大いに誓う。
新田守男選手
「朝のフリー走行からうまくいかないことばかりだったんですが、決勝ではGT300のトップと出会う場面もあって、比較的期待の持てそうな走りもできていたんです。だから、レースを始めからいい形でスタートできていたら、面白い結果が出ていたかもしれませんね。ただ、ちょっとこういうトラブルがチームは続いているので、大きな改善をしていかないと厳しいですね。本当に応援している方々、期待していてくれている方々に申し訳なく思います……。次はそういうことがないように本当に頑張って、1000kmも難しいレースですが、頑張って優勝を狙っていきます。」
嵯峨宏紀選手
「トラブルが出てピットスタートになり、スタートに間に合わなかったんですが、起きてしまったことは仕方ないので、次の鈴鹿1000kmに向けてデータ取りを。やれることはすべてやったレースなんですけど、やっぱり結果が残らず残念です。僕のスティントでは雨が降ってきたりと、非常に難しいコンディションの中、レインタイヤのテストをしたりしたんですが、いいデータを取ることができました。最大のライバルが好調なので厳しい状況にあるのは事実ですが、最後まで諦めずにチャンピオンを狙っていきます。」
金曽監督
「応援頂きました皆様、関係者の皆様、心よりお詫び申し上げます。HONDAハイブリッドが2戦連続表彰台に対し我々は2戦連続NOポイント。今回の要因となった部品も簡単に壊れる物では無く、定期交換されているものであり整備ミスも無かった….。前回のエンジン部品も同じく….。技術の最先端で挑戦を続けている事から想定外のメカニカルトラブルは承知だが、ハイブリッド初優勝以来 流れとツキが非常に悪いので先ずは各々のやるべきことを再認識し後半戦に挑みます。先ずは私から実行致しますので、今後とも宜しくお願いいたします。」