2013 AUTOBACS SUPER GT Round 1

 

開催地:岡山国際サーキット/3.703km

 

4月6日(予選)天候:雨 コースコンディション:ウェット 観客数:8,000人  4月7日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:16,000人

 ファイルーズ・ファウジー、新加入の開幕戦は、手堅く完走果たす

2013年のスーパーGTは、シリーズとしては全8戦で開催され、さらに特別戦を5月に韓国で初めて行う予定となっている。昨年に続いてアウディR8 LMS ultraを走らせるaprは、岩崎祐貴選手のパートナーを変更。新たに起用されたファイルーズ・ファウジー選手はマレーシア出身のドライバーで、昨年の 母国セパンサーキットでのレースにスポットで参戦している。キャリアも豊富でGP2の参戦経験ばかりか、F1のテスト&リザーブドライバーを務めたこと も。起用の理由は、「Panasonic apr PRIUS GT」を駆るチームメイト、新田守男選手が海外でのレース参戦において、きらりと光るものを見出したからだ。期待に応える成績を残せば、年々進むシリーズ のインターナショナル化にも、きっと好影響をもたらすことだろう。

「IWASAKI apr R8」が挑む今年最初の舞台、岡山国際サーキットはシリーズ屈指のテクニカルコースとして、中低速コーナー主体のレイアウトで知られている。昨年も開幕の 舞台として選ばれ、その時は他チームのアウディが優勝していることから、決して相性は悪くなさそう。シーズン序盤から存在感を、大いに示すことが期待され た。

公式練習 4月6日(土)10:00〜

 

桜の開花が遅い岡山県北東部では、今がまさに見頃という状況に。だが、レースを観戦しつつ桜を愛でることは、どうやら許されそうもなかった。という のも、天気予報では週末の天候悪化が告げられており、それも春の嵐と大型台風並みの警戒が叫ばれるほど。搬入日は好天に恵まれただけに、誰もが残念そうに 青空を仰ぎ見ていたほどだ。土曜日は早朝まで厚い雲に覆われこそしていたが、雨風に見舞われずにいただけに予報の外れることを期待したものの、それもかな わず。公式練習が始まる直前に降り始めた雨は、最初の頃だけ小雨で勢いをどんどん強めていく。やがてドライタイヤでは、走れないほどの状態に転じること に。

そんな微妙なコンディションだったこともあり、「IWASAKI apr R8」の走り出しは岩崎祐貴選手が担当。まだドライタイヤを装着していた段階で、いち早くアタックモードに入れて1分37秒257をマークした後、ファイ ルーズ・ファウジー選手に交代。その後も交互に乗り込むことで変化に対処しつつ、情報を共有し合う。その結果、間違いなく再びウェットコンディションとな る予選に向けて、確かな手応えを獲得することにも成功した。

公式予選Q1 14:10〜14:25

 

今年から全戦でノックアウト予選が行われることになり、しかも2セッションで競われることになった。Q1からQ2への進出が許されるのは、上位13 位まで。それも公式練習の様子では、決して困難なこととは思われなかった。ひとつ心配の種があるとすれば、天候の変化だった。公式練習時よりも雨は勢いを 増し、しかも雨量は絶えず変化していたため、アタックをどのタイミングでかけるかが重要なポイントとなる。だが、その難しい仕事もファイルーズ選手は巧み にこなしていった。いきなり大任を託されたにもかかわらず、状況に応じてタイムを上げ続け、Q2進出圏内まであとわずかとなる、1分50秒263にまでタ イムを伸ばしてきた。

だが、さらにタイムを縮めようと、気持ちが先走ってしまったファイルーズ選手。次の周のWヘアピンのひとつ目でスピンを喫してコースアウト、マシン をストップさせてしまう。そして、赤旗が。15番手に相当するタイムを出していたものの、赤旗の原因となってしまった車両はタイムが抹消されてしまうた め、Q2進出が許されず。そればかりか、「IWASAKI apr R8」は23番手と、厳しいポジションから決勝に挑む羽目となった。

岩崎祐貴選手コメント

「練習走行では主にタイヤの選定を行って、選んだソフトタイヤとのバランスがすごく良かったんです。スタビをいじっただけで安定して走れるようにな りましたし、ファイルーズ選手も、この方がいいって断言してくれたぐらいで。予選は彼が乗れていてガンガン行って、最後に狙ったところで、つい……ってい う惜しいことをしてしまったというのはあるんですが、実力は折り紙付きのドライバーですし、僕もそれに負けないように頑張るしかない。決勝ではスタートを 決めて、どんどん順位を上げて行きたいと思っています」

ファイルーズ選手コメント

「雨は得意なので気持ちよくアタックしていたが、ベストアタック周に前のマシンとのブレーキポイントが合わずにスピンさせるしかなかった。そのまま 走り切れればQ1は容易なタイムであった。スピン後、グラベルに停まりタイムが抹消されて明日のスタートが後方になったことは反省している。初めて日本で の予選で結果を残したかった。明日は必ずこの悔しさを晴らしたい。」

 

金曽監督コメント

「難しい状況は判るが結果的に、スピンは余計である。F1ドライバーでもあったファイルーズ選手の実力からは、もっと簡単にタイムは出せたはず。こ れにより明日の展開も厳しくなるが次の成長、次の結果のために今は受け入れている。ファイルーズ選手には、速さは有っても安定感が無ければSUPER GTでは通用しないことを学んでもらいたい。しかし実力は末恐ろしいドライバーであることは間違いない。」

決勝日・フリー走行 4月7日 9:15〜9:45

 

Q1の後、どんどん天候が悪化して、GT500のQ2は結局中止に。そんな最悪のコンディションから一転して、日曜日の早朝は穏やかな天気に改まっ ていた。フリー走行の始まりは、まだ路面も濡れていたが、晴れ間も広がって、かつ強い風が時折吹いていたこともあって、時間が立つにつれ、どんどん乾いて いった。

このフリー走行で先に「IWASAKI apr R8」に乗り込んだのはファイルーズ選手。土曜日の公式練習と同じように交互にドライブし、意見を交わし合いながらセッティングを進め、これが効果的に機 能していたのは、徐々にタイムが短縮されていたことでも明らかだ。このセッションで記録されたベストタイムは、ファイルーズ選手の1分39秒044だっ た。

決勝レース(82周)14:00〜

 

フリー走行が終わった後のサポートレースでは小雨が降り、路面を濡らすまでにはいたらなかったにせよ、依然として天気は不安定。春の嵐のような状態 こそもうないだろうが、いつ突然変化があってもおかしくないように感じられた。実際、決勝の直前は晴れ間にこそ恵まれたものの、強い風が吹いており、気温 は11度、路面温度は21度でしかなかった。

今回のスタート担当は岩崎選手。フォーメイションラップにGT500の車両にスピンがあり、隊列が整っていなかったこともあり、ローリングがもう1周行わ れるとともに、周回数は1周減らされる。路面温度が低かったが、これで十分タイヤにも熱が入ったのだろう。心配された1コーナーでの波乱もなく、レースは スムーズに開始された。

しばらくポジションをキープしていた岩崎選手だが、マシンはこんな後方にいるようなパフォーマンスではない。5周目にひとつ順位を上げたのをきっかけに、 前方のアクシデントもあって8周目には20番手に浮上する。だが、ただでさえ低かった路面温度は、周回が進むにつれ、より下がっていってスタート時に設定 したタイヤの内圧とマッチしなくなってしまう。20周目には19番手に上がったものの、それ以上が望めなくなっていたこともあり、30周目に早くもファイ ルーズ選手と交代することとなった。

日本のサーキットで初めての決勝にも関わらず、ファイルーズ選手の走りは極めて安定しており、タイムの刻みもコンスタント。全車がドライバー交代を済ませ、レースが落ち着きを取り戻すと、15番手に浮上していた。

その後も49周目に1台を、そして57周目にはもう1台をパス。惜しくも72周目、1台に抜かれてしまったものの、トータルで10ポジションアップとなる13位でゴールすることとなった。

予選の失敗が決勝にも大きく影響を及ぼしたとはいえ、大きな収穫や確認もできただけに、次回の富士に大きな期待を抱かずにはいられない。

 

岩崎祐貴選手コメント

「今回、予選の天候がいちばんのネックとなって、実力を全部出し切れず、それが決勝の順位につながってしまいました。ただ、ファイルーズ選手は実力 のあるドライバーで、いきなり僕と同じぐらいのタイムで走ってくれたので、予選をしっかり組み立てられれば、今後のレースでも確実にポイントが獲れるとい う確信が得られました。アウディは決して直線の速いクルマではありませんが、後半の落ち込みが少ないので、長いレースほど得意なんです。だから、次の富士 では必ず入賞してみせます」

 

ファイルーズ選手コメント

「マシンのまとまりもあったがGT500との混走からのタイムドロップに関しては、まだ自分なりに改善しなければならない。決勝は13番手でチェッ カーとなりポイントは獲れなかった。その理由は昨日の予選であることは間違いない。予選のポジションが良ければ今日の結果は大きく変わったはず。次の富士 は、とにかく予選を完璧にこなし決勝結果でチームに貢献したい。SUPER GTはエキサイトであり素晴らしいレースだ。早い時期に岩崎選手と優勝を果たしたい。」

 

金曽監督コメント

「後方からのスタートでありながらレース展開は両ドライバー共に最善を尽くしたと思う。予選さえ良ければ確実にポイント圏内のレースであった。岩崎 選手、ファイルーズ選手のバランスも良く、上手くレースを組み立てられたと思う。早い時期に上位常連組になる期待は大きい。今シーズ ン#30IWASAKI apr R8に注目。」